【この記事の結論】 生前贈与は年間110万円の基礎控除を活用すれば非課税で財産を渡せますが、贈与契約書の作成と銀行振込が税務署対策の必須条件です。

  • 暦年贈与 — 年110万円まで非課税だが、相続開始前7年分は相続税に加算される
  • 相続時精算課税 — 累計2,500万円まで贈与税ゼロ、2024年から年110万円の基礎控除が新設
  • 否認されない5つのポイント — 贈与契約書・振込記録・申告を毎年きちんと行うことが重要

この記事の対象読者: 子や孫に非課税で財産を渡したい方、暦年贈与と相続時精算課税の違いを知りたい方

読んだら今日やること: 暦年贈与と相続時精算課税の比較表を確認し、自分に合う制度を1つ選びましょう

「生前贈与で節税したいけれど、どうやれば非課税になるの?」と疑問をお持ちではありませんか。

生前贈与にはいくつかの非課税制度があります。正しいやり方で進めれば、贈与税がかからず財産を渡せます。しかし、やり方を間違えると税務署に否認されることも。思わぬ税金がかかるケースもあるため注意が必要です。

この記事では、生前贈与を非課税で行う具体的なやり方を5つのステップで解説します。暦年贈与と相続時精算課税制度の違いや、贈与契約書の書き方、2024年の税制改正で変わったポイントもくわしくご紹介します。

ぜひ最後までお読みいただき、ご家族の状況に合った生前贈与の方法を見つけてください。

生前贈与とは?非課税になる仕組みを分かりやすく解説

まず、生前贈与の基本と、なぜ非課税にできるのかを確認しましょう。

生前贈与の基本的な意味

生前贈与とは、生きているうちに子どもや孫などに財産を渡すことです。

通常、財産を無償で受け取ると「贈与税」がかかります。しかし、一定の金額までは税金がかからない「非課税枠」が設けられています。

この非課税枠をうまく活用することで、将来の相続税を減らす効果も期待できます。

なぜ生前贈与で節税できるのか

相続税は、亡くなった時点の財産全体に課税されます。

生前贈与で財産を先に渡しておけば、相続時の財産総額が減ります。その結果、相続税の負担を軽くできるわけです。

ただし、やり方を間違えると節税効果がなくなるため、正しい手順で進めることが大切です。

生前贈与で使える主な非課税制度

生前贈与で活用できる非課税制度は、主に以下の6つです。

制度名 非課税の上限額 主な対象者
暦年贈与(基礎控除) 年間110万円 誰でも
相続時精算課税制度 累計2,500万円+年110万円 60歳以上の親から18歳以上の子・孫
住宅取得等資金の贈与 最大1,000万円 子・孫の住宅購入時
教育資金の一括贈与 最大1,500万円 30歳未満の子・孫(2026年3月末で終了予定)
結婚・子育て資金の贈与 最大1,000万円 18〜50歳の子・孫
夫婦間の居住用不動産贈与 2,000万円 婚姻20年以上の夫婦

このなかでも、多くの方が利用するのが「暦年贈与」と「相続時精算課税制度」です。この2つの違いについては、後ほどくわしく比較します。

生前贈与を非課税で行う5つのステップ

ここからは、実際に生前贈与を非課税で進めるための具体的な手順をご紹介します。

ステップ1:贈与する財産と金額を決める

最初に、何を・いくら贈与するかを決めましょう。

生前贈与できる財産には、以下のようなものがあります。

  • 現金・預貯金: もっとも一般的で手続きも簡単
  • 不動産(土地・建物): 名義変更の登記手続きが必要
  • 株式・投資信託: 証券会社での手続きが必要
  • 生命保険の契約者変更: 保険会社への届出が必要

初めての生前贈与であれば、まずは現金の贈与から始めるのがおすすめです。

金額は、暦年贈与の場合「年間110万円以下」にすると贈与税がかかりません。

ステップ2:どの非課税制度を使うか選ぶ

次に、ご自身の状況に合った非課税制度を選びます。

制度選びのポイントは以下のとおりです。

  • 少額を毎年コツコツ贈与したい → 暦年贈与
  • 短期間でまとまった額を渡したい → 相続時精算課税制度
  • 子どもの住宅購入を支援したい → 住宅取得等資金の非課税特例
  • 孫の教育費を援助したい → 教育資金の一括贈与

ポイント暦年贈与と相続時精算課税制度は併用できません。同じ贈与者に対してどちらか一方を選ぶ必要があります。一度、相続時精算課税制度を選ぶと暦年贈与に戻すことはできないため、慎重に判断しましょう。

ステップ3:贈与契約書を作成する

制度が決まったら、贈与契約書を作成します。

口頭の約束でも贈与は成立しますが、書面を残すことで税務署への証拠になります。贈与契約書がないと「名義預金」とみなされ、相続税の課税対象になるリスクがあります。

贈与契約書に記載する5つの項目:

  1. 贈与者の情報: 氏名・住所・生年月日
  2. 受贈者の情報: 氏名・住所・生年月日
  3. 贈与する財産の内容: 種類(現金など)と金額
  4. 贈与の日付と方法: いつ・どのように渡すか(銀行振込など)
  5. 双方の署名と押印: できれば実印を使用

贈与契約書の記載例:

贈与契約書贈与者 山田太郎(以下「甲」という)と受贈者 山田一郎(以下「乙」という)は、以下のとおり贈与契約を締結する。第1条 甲は乙に対し、現金100万円を贈与し、   乙はこれを受諾した。第2条 甲は、2026年3月10日までに、   上記金額を乙名義の下記口座に振り込む   方法により引き渡す。   ○○銀行 △△支店 普通 12345672026年2月19日甲(贈与者)住所: 東京都○○区△△1-2-3氏名: 山田太郎(署名)  印乙(受贈者)住所: 東京都○○区□□4-5-6氏名: 山田一郎(署名)  印

注意署名と日付は必ず手書きにしましょう。パソコンで作成しても構いませんが、署名だけは直筆にすることで信頼性が高まります。

ステップ4:財産を実際に移転する

贈与契約書を作成したら、実際に財産を渡します。

現金を贈与する場合のポイント:

  • 必ず銀行振込で行う(手渡しは証拠が残らない)
  • 振込先は受贈者本人の口座にする
  • 受贈者が通帳と印鑑を自分で管理する

振込の記録が通帳に残ることで、贈与が行われた証拠になります。

不動産を贈与する場合のポイント:

  • 法務局で所有権移転登記を行う
  • 登録免許税(固定資産税評価額の2%)がかかる
  • 司法書士に依頼するのが一般的

ステップ5:必要に応じて贈与税の申告をする

暦年贈与で110万円以下の場合、贈与税の申告は不要です。

ただし、以下のケースでは申告が必要になります。

ケース 申告の要否
暦年贈与で年間110万円以下 申告不要
暦年贈与で年間110万円超 申告が必要
相続時精算課税制度を利用(110万円超) 申告が必要
住宅取得等資金の非課税特例を利用 申告が必要(非課税でも申告必須)
教育資金の一括贈与を利用 金融機関での手続きが必要

贈与税の申告期限:

贈与を受けた年の翌年2月1日〜3月15日までに、受贈者の住所地を管轄する税務署に申告書を提出します。

ポイント住宅取得等資金の非課税特例など、一部の制度は「たとえ贈与税が0円でも申告が必要」です。申告を忘れると非課税の適用が受けられなくなるため、注意しましょう。

暦年贈与と相続時精算課税を徹底比較|どちらを選ぶべき?

生前贈与の非課税制度のなかで、特に迷いやすいのが「暦年贈与」と「相続時精算課税制度」の選択です。

2024年の税制改正で相続時精算課税制度に年間110万円の基礎控除が新設されたことで、どちらが有利なのか判断しにくくなりました。

ここでは、両制度の違いをくわしく比較します。

暦年贈与の特徴

暦年贈与(暦年課税)は、1年間に受け取った贈与額から基礎控除110万円を差し引いた金額に贈与税がかかる仕組みです。

メリット:– 誰からの贈与でも使える(年齢制限なし)- 毎年コツコツ贈与すれば大きな金額を非課税で移転できる- 制度の選択届出が不要

デメリット:– 相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算される(2024年改正)- 毎年の非課税枠が110万円と少ない

相続時精算課税制度の特徴

相続時精算課税制度は、累計2,500万円まで贈与税を非課税とし、贈与者が亡くなったときに相続財産に加算して相続税を計算する制度です。

2024年からは、2,500万円の特別控除とは別に、年間110万円の基礎控除が新設されました。

メリット:– 年間110万円以下の贈与は相続財産に加算されない(2024年〜)- まとまった金額を一度に贈与できる(累計2,500万円まで贈与税なし)- 値上がりが見込まれる財産は、贈与時の低い評価額で固定できる

デメリット:– 一度選択すると暦年贈与に戻せない- 対象者が限られる(60歳以上の親・祖父母→18歳以上の子・孫)- 相続時に精算されるため、最終的な節税効果がないケースもある

両制度の比較表

比較項目 暦年贈与 相続時精算課税
年間の非課税枠 110万円 110万円(2024年新設)
累計の非課税枠 なし(毎年リセット) 2,500万円
超過分の税率 10〜55%(累進課税) 一律20%
相続財産への持ち戻し 7年以内の贈与を加算 110万円超の部分のみ加算
対象者の要件 制限なし 60歳以上→18歳以上の子・孫
一度選択した後 いつでも利用可 暦年贈与に戻せない
申告の手間 110万円以下なら不要 110万円以下なら不要(2024年〜)

ケース別|あなたに向いているのはどちら?

暦年贈与が向いているケース:

  • 相続までの期間が7年以上ある(早くから贈与を始められる)
  • 孫など法定相続人でない人にも贈与したい
  • 毎年少しずつ、長期間にわたって贈与を続けたい
  • 複数の贈与者から財産を受け取る予定がある

相続時精算課税が向いているケース:

  • 相続までの期間が7年未満と想定される
  • まとまった金額を短期間で渡したい(住宅購入の支援など)
  • 値上がりが見込まれる不動産や株式を贈与したい
  • そもそも相続税の基礎控除内に収まる見込み(相続税がかからない)

ポイント2024年改正により、贈与期間が短い場合は相続時精算課税が有利になるケースが増えました。たとえば7年間で毎年110万円を贈与した場合、暦年贈与では最大770万円が相続財産に加算されます(ただし4〜7年前の贈与には合計100万円の控除あり)。一方、相続時精算課税では加算額が0円になります。

暦年贈与と相続時精算課税のどちらが有利かは、ご家族の財産状況や贈与期間によって異なります。判断に迷われた場合は、相続に詳しい税理士に相談するのがおすすめです。無料で相談できる事務所も多いので、まずは気軽に問い合わせてみましょう。

税務署に否認されないための5つのポイント

せっかく非課税で生前贈与をしても、やり方を間違えると税務署に贈与を否認される可能性があります。

ここでは、よくある失敗パターンと対策をご紹介します。

ポイント1:贈与契約書を毎年作成する

生前贈与を毎年行う場合、贈与のたびに新しい契約書を作成しましょう。

同じ内容の契約書を1回だけ作り、毎年同額の贈与を繰り返すと、「最初から合計額の贈与を約束していた(定期贈与)」とみなされるおそれがあります。

たとえば、110万円を10年間にわたり贈与した場合、本来なら毎年非課税のはずです。しかし、定期贈与と判断されると1,100万円に対して贈与税がかかる可能性があります。

対策:– 贈与のたびに新しい贈与契約書を作る- 贈与の金額や時期を毎年少しずつ変える- 「毎年110万円を10年間贈与する」といった約束はしない

ポイント2:銀行振込で記録を残す

現金の手渡しは、贈与の証拠が残りません。

税務調査の際に「贈与があった」と証明できないと、否認されるリスクが高くなります。

対策:– 必ず銀行振込で行い、通帳に記録を残す- 振込の明細書や通帳のコピーを保管しておく

ポイント3:受贈者が口座を自分で管理する

「子ども名義の口座に毎年お金を入れているけれど、通帳も印鑑も親が持っている」というケースは、名義預金とみなされる典型的なパターンです。

名義預金と判断されると、贈与ではなく親の財産として相続税の対象になります。

対策:– 受贈者本人が通帳・印鑑・キャッシュカードを管理する- 受贈者が口座のお金を実際に使った実績を残す- 子どもが未成年の場合は、親権者として管理する形を取る

ポイント4:双方の意思確認を明確にする

贈与は「あげる」「もらう」という双方の合意があって初めて成立します。

受贈者が贈与の事実を知らない場合、贈与として認められません。

対策:– 贈与契約書に双方が署名・押印する- 受贈者本人が贈与を受けたことを認識している状態にする- 孫が幼い場合は、親権者が法定代理人として署名する

ポイント5:あえて少額の贈与税を納める方法も

毎年110万円をわずかに超える金額(たとえば115万円)を贈与し、少額の贈与税を申告・納付する方法もあります。

贈与税を毎年納めることで、税務署に対して「計画的な一括贈与ではない」ことを示す効果があります。

115万円を贈与した場合、110万円を超えた5万円に対する贈与税は5,000円です。この5,000円の税金を払うことで、贈与の実態を税務署に明確に示せるメリットがあります。

2024年の税制改正で変わった3つのポイント

2024年(令和6年)1月から、生前贈与に関する税制が大きく変わりました。

特に重要な3つの変更点を確認しておきましょう。

変更点1:生前贈与加算が3年→7年に延長

暦年贈与で行った生前贈与のうち、相続開始前の一定期間に行った分は、相続財産に加算されます。

これまでは「3年以内」でしたが、改正により段階的に延長され、2031年以降は「7年以内」となります。

相続開始年 加算期間
〜2026年 3年
2027年 4年
2028年 5年
2029年 6年
2030年 6年
2031年以降 7年

なお、4〜7年前の贈与については、合計額から100万円を差し引いた額が加算されます。

変更点2:相続時精算課税制度に年間110万円の基礎控除が新設

これまで相続時精算課税制度には年間の基礎控除がありませんでしたが、2024年から年間110万円の基礎控除が新たに設けられました。

この年間110万円以下の贈与は、将来の相続財産にも加算されません。つまり、完全に非課税で贈与できます。

これにより、相続時精算課税制度の使い勝手が大きく向上しました。

変更点3:暦年贈与と相続時精算課税の有利不利が変化

上記2つの改正の結果、状況によっては相続時精算課税の方が有利になるケースが増えました。

特に、贈与期間が短い場合は相続時精算課税制度の方が節税効果が高くなるケースがあります。これまでは「暦年贈与がお得」という常識がありましたが、改正後は一概にそうとは言えなくなりました。

注意税制改正の内容は複雑で、個々の状況によって有利な制度は異なります。具体的な判断については、相続税に詳しい税理士に相談されることをおすすめします。

よくある質問

Q. 生前贈与は110万円以下なら申告しなくてよいですか?

A. 暦年贈与で年間110万円以下であれば、贈与税の申告は不要です。ただし、注意が必要なのは「受贈者ごと」の合計額で判断するという点です。たとえば、父から80万円、祖母から40万円をもらった場合、合計120万円となり申告が必要です。

Q. 生前贈与は現金の手渡しでもよいですか?

A. 法律上は現金の手渡しでも贈与は成立します。しかし、税務署への証拠が残らないため、銀行振込で行うことを強くおすすめします。手渡しの場合、税務調査で贈与の事実を証明できず、名義預金と判断されるリスクがあります。

Q. 親子間の生前贈与でも贈与契約書は必要ですか?

A. はい、親子間であっても贈与契約書の作成を強くおすすめします。贈与契約書がないと、税務調査の際に「名義預金」や「定期贈与」とみなされるリスクが高まります。家族間のトラブル防止のためにも、書面を残しておきましょう。

Q. 相続時精算課税を選んだら取り消せますか?

A. 一度、相続時精算課税制度を選択すると、その贈与者からの贈与については暦年贈与に戻すことはできません。ただし、別の贈与者からの贈与には影響しません。たとえば、父からの贈与で相続時精算課税を選んでも、母からの贈与は暦年贈与を使えます。

Q. 生前贈与はいつから始めるのがよいですか?

A. 生前贈与は早く始めるほど効果的です。暦年贈与の場合、相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算されるため、早めに始めることで加算の影響を受けない贈与額を増やせます。50代・60代のうちに計画を立て、できるだけ早く開始することをおすすめします。

まとめ

この記事では、生前贈与を非課税で行うやり方を5つのステップで解説しました。

記事のポイントをおさらいしましょう。

  • 暦年贈与は年間110万円まで非課税。申告も不要
  • 相続時精算課税制度は累計2,500万円+年間110万円が非課税枠
  • 2024年改正で暦年贈与の加算期間が7年に延長、精算課税に110万円控除が新設
  • 贈与契約書の作成と銀行振込が、税務署に否認されないための必須対策
  • 暦年贈与と相続時精算課税は状況に応じて使い分けることが大切

生前贈与は正しいやり方で計画的に進めれば、大きな節税効果が期待できます。「まだ早いかな」と思われるかもしれませんが、早く始めるほど有利です。

ただし、税制は改正されることもあり、ご家族の状況はそれぞれ異なります。具体的な金額や制度の選択については、相続税に強い税理士に一度相談してみることをおすすめします。無料相談を受け付けている事務所も多いので、まずは気軽に問い合わせてみてはいかがでしょうか。


※ この記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の事情については、専門家(税理士・弁護士・司法書士など)にご相談ください。

※ 記事中の税制情報は2026年2月時点の内容です。最新の情報は国税庁のホームページ等でご確認ください。

参考情報:– 国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4402.htm)- 国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4103.htm)- 国税庁「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4508.htm)

最終更新日: 2026年2月19日

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