【この記事の結論】 相続税は遺産が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えると課税され、相続人3人なら4,800万円までは非課税です。

  • 基礎控除額の計算式 — 3,000万円+600万円×法定相続人の数で算出。1人なら3,600万円、3人なら4,800万円
  • 配偶者控除・小規模宅地特例 — 配偶者は最大1億6,000万円まで非課税、自宅の土地は評価額を最大80%減額可能
  • 2015年改正で課税対象が約2倍に — 基礎控除が4割引き下げられ、一般家庭でも課税されるケースが増加

この記事の対象読者: 親の相続で税金がかかるか不安な方、基礎控除の計算方法を知りたい方、相続税を減らす制度を調べている方

読んだら今日やること: 法定相続人の人数を確認し、早見表で基礎控除額と遺産の概算額を比較してみましょう

相続税は、遺産の合計額が基礎控除額を超えた場合にかかる税金です。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。たとえば法定相続人が3人なら4,800万円までは非課税です。

「親が亡くなったけれど、相続税はかかるのだろうか」「うちの場合、いくらまでなら大丈夫?」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、相続税の基礎控除の仕組みや計算方法を、早見表や具体的なシミュレーションを交えてわかりやすく解説します。配偶者控除や小規模宅地等の特例など、基礎控除以外に使える制度もあわせてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

相続税はいくらからかかる?基礎控除の仕組みをわかりやすく解説

相続税は遺産の合計額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えたときにかかり、法定相続人が1人なら3,600万円が非課税ラインです。

相続税の基礎控除とは、すべての相続で無条件に差し引ける非課税枠のことです。遺産の合計がこの基礎控除額以下であれば、相続税はかからず、申告も原則不要です。

基礎控除額の計算式

基礎控除額の計算式は、とてもシンプルです。

基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)

たとえば法定相続人が2人の場合、基礎控除額は4,200万円になります。遺産の合計額が4,200万円以下なら、相続税はかかりません。

逆に、遺産が基礎控除額を超えると、超えた部分に対して相続税が課税されます。

法定相続人の数え方と注意点

基礎控除の計算で重要なのは「法定相続人の数」です。法定相続人とは、民法で定められた相続する権利を持つ人のことです。

法定相続人の範囲と順位は次のとおりです。

区分 対象者 備考
常に相続人 配偶者 内縁関係は含まれない
第一順位 死亡している場合は孫が代襲相続
第二順位 父母・祖父母 子がいない場合
第三順位 兄弟姉妹 子も直系尊属もいない場合

基礎控除の計算における注意点は以下の3つです。

  • 相続放棄した人も人数に含める: 相続放棄をした人がいても、基礎控除の計算では「放棄がなかったもの」として数えます
  • 養子には人数制限がある: 実子がいる場合は養子1人まで、実子がいない場合は養子2人までが法定相続人に含まれます
  • 離婚した元配偶者は含まれない: 法定相続人となる配偶者は、亡くなった時点で婚姻関係にある人だけです

【早見表】法定相続人の人数別・基礎控除額はいくら?

法定相続人の数に応じた基礎控除額は3,600万円〜6,000万円で、1人増えるごとに600万円ずつ増加します。

法定相続人1人〜5人の基礎控除額一覧

法定相続人の数 基礎控除額 具体例
1人 3,600万円 配偶者のみ、子1人のみ
2人 4,200万円 配偶者+子1人
3人 4,800万円 配偶者+子2人
4人 5,400万円 配偶者+子3人
5人 6,000万円 配偶者+子4人

遺産の合計額がこの基礎控除額以下であれば、相続税はかかりません。まずは上の表で、ご自身の家族構成に当てはめてみてください。

実際に相続税がかかる人の割合は?

「相続税がかかるのは一部のお金持ちだけ」というイメージをお持ちの方もいるかもしれません。実際の課税割合を見てみましょう。

国税庁が公表した令和5年分のデータでは、相続税の課税状況は次のとおりです。

項目 数値
死亡者数 約157.6万人
申告件数 約15.6万件(全体の9.9%)
課税件数 約11.6万件(全体の7.4%)

つまり、亡くなった方のうち約10人に1人が相続税の申告をしています。2015年の基礎控除引き下げ以降、課税対象者は増加傾向にあります。

「うちは大丈夫」と思っていても、自宅の土地を含めると基礎控除を超えるケースは珍しくありません。一度、遺産の概算を確認しておくと安心です。

相続税の計算方法は?4ステップでシミュレーション

相続税の計算は「遺産総額の算出→基礎控除の差し引き→税額の算出→各種控除の適用」の4ステップで行います。

ここでは、配偶者と子2人(法定相続人3人)、遺産総額8,000万円のケースで具体的にシミュレーションしてみましょう。

STEP1: 遺産総額を算出する

まず、亡くなった方の財産をすべて合計します。対象となる主な財産は次のとおりです。

財産の種類 確認方法
現金・預貯金 通帳の残高を合計
不動産(土地・建物) 固定資産税の納税通知書で評価額を確認
有価証券(株式・投資信託) 証券会社の残高報告書
生命保険金 保険証券で確認(非課税枠あり)
死亡退職金 勤務先に確認(非課税枠あり)

ここから借入金や葬式費用などの債務を差し引いたものが「正味の遺産額」です。

今回の例では、正味の遺産額を8,000万円とします。

STEP2: 課税遺産総額を計算する

正味の遺産額から基礎控除額を差し引きます。

  • 基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 × 3人)= 4,800万円
  • 課税遺産総額 = 8,000万円 − 4,800万円 = 3,200万円

この3,200万円が相続税の課税対象です。

STEP3: 相続税の総額を算出する

課税遺産総額を法定相続分で按分(あんぶん)し、それぞれに税率を適用します。

相続人 法定相続分 取得金額 税率 控除額 税額
配偶者 1/2 1,600万円 15% 50万円 190万円
子A 1/4 800万円 10% 80万円
子B 1/4 800万円 10% 80万円

相続税の総額 = 190万円 + 80万円 + 80万円 = 350万円

STEP4: 各相続人の納付税額を計算する

相続税の総額を、実際の取得割合に応じて各相続人に振り分けます。

ここで配偶者には「配偶者の税額軽減」が適用されるため、法定相続分以下の取得であれば税額はゼロになります。

ポイント
計算が複雑に感じるかもしれませんが、「基礎控除を超えるかどうか」の判断だけなら、遺産の概算額と上の早見表を照らし合わせればすぐに分かります。

相続税の税率はどのくらい?速算表で確認しよう

相続税の税率は10%〜55%の8段階で、法定相続分に応ずる取得金額が大きいほど高くなる超過累進税率が採用されています。

相続税の税率と速算表

相続税は以下の速算表にもとづいて計算します。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
1,000万円超〜3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超〜5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超〜1億円以下 30% 700万円
1億円超〜2億円以下 40% 1,700万円
2億円超〜3億円以下 45% 2,700万円
3億円超〜6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

(出典: 国税庁「No.4155 相続税の税率」

税率の適用例

たとえば、法定相続分に応ずる取得金額が2,000万円の場合は次のように計算します。

  • 2,000万円 × 15% − 50万円 = 250万円

この速算表の「控除額」は、超過累進税率を簡単に計算するためのものです。基礎控除とは異なりますので、混同しないようにしましょう。

基礎控除以外に使える控除・特例にはどんなものがある?

基礎控除のほかにも、配偶者の税額軽減(最大1億6,000万円まで非課税)や小規模宅地等の特例(土地評価額を最大80%減額)などを活用すれば、相続税を大幅に軽減できます。

配偶者の税額軽減(配偶者控除)

配偶者が相続した財産のうち、次のいずれか大きい方の金額までは相続税がかかりません。

  • 1億6,000万円
  • 法定相続分相当額

つまり、配偶者が法定相続分どおりに遺産を受け取る場合、相続税は基本的にゼロです。

ただし、この特例を使うには相続税の申告が必要です。税額がゼロでも申告しなければ適用されません。

注意
配偶者控除を最大限使って一次相続の税額を減らすと、二次相続(配偶者が亡くなったとき)で子の負担が大きくなるケースがあります。一次相続と二次相続をあわせたトータルで考えることが大切です。

小規模宅地等の特例

亡くなった方が住んでいた自宅の土地について、一定の条件を満たすと評価額を最大80%減額できる制度です(国税庁「No.4124 小規模宅地等の特例」)。

用途 限度面積 減額割合
自宅(特定居住用宅地等) 330㎡ 80%
事業用(特定事業用宅地等) 400㎡ 80%
貸付用(貸付事業用宅地等) 200㎡ 50%

たとえば、自宅の土地の評価額が5,000万円の場合、この特例を使うと1,000万円の評価になります。結果として基礎控除の範囲内に収まり、相続税がかからなくなるケースも多いです。

注意
小規模宅地等の特例を使う場合も、相続税の申告が必要です。
「税額がゼロだから申告不要」と誤解すると、特例が適用されず多額の相続税が発生する可能性があります。

死亡保険金・死亡退職金の非課税枠

生命保険金や死亡退職金には、それぞれ非課税枠があります。

  • 死亡保険金の非課税枠 = 500万円 × 法定相続人の数
  • 死亡退職金の非課税枠 = 500万円 × 法定相続人の数

法定相続人が3人なら、それぞれ1,500万円までは課税対象に含まれません。

生命保険は相続税対策としても活用されています。非課税枠の範囲内で生命保険に加入しておくと、相続税の負担を軽減できます。

50代以降の生命保険の見直しについては「50代の生命保険見直し|5つのポイントと失敗しない手順を解説」を参考にしてください。

相続税の基礎控除はいつ変わった?改正の歴史と今後の注意点

2015年に基礎控除額が4割引き下げられ(5,000万円→3,000万円)、課税対象者は約2倍に増加しました。2024年からは生前贈与加算期間も7年に延長されています。

2015年の基礎控除引き下げ

2015年1月1日の税制改正で、基礎控除額が大幅に引き下げられました。

相続税の計算方法の詳細は国税庁「No.4152 相続税の計算」をご参照ください。

項目 2014年以前 2015年以降
基礎控除額 5,000万円+1,000万円×法定相続人の数 3,000万円+600万円×法定相続人の数
法定相続人3人の場合 8,000万円 4,800万円
課税割合 約4% 約8〜10%

この改正により、以前は相続税とは無縁だった一般家庭でも、自宅の土地を含めると基礎控除を超えるケースが増えています。

2024年からの生前贈与加算期間の延長

2024年1月1日以降の相続から、生前贈与加算の対象期間が段階的に延長されています。

相続開始時期 加算対象期間
2023年以前 相続開始前3年以内
2024年〜2026年 経過措置により実質3年以内
2027年以降 段階的に延長、最終的に7年以内

延長された4〜7年前の期間に贈与された財産については、合計100万円を控除した残額が相続財産に加算されます。

2026年現在は経過措置の期間中ですが、今後の相続対策を考えるうえでは7年ルールを見据えた計画が重要です。

生前贈与を活用した相続税対策については「生前贈与を非課税で行うやり方|110万円の控除と2つの制度を比較」でくわしく解説しています。

よくある質問

Q. 相続税がかからない場合でも申告は必要?

A. 基礎控除の範囲内で相続税がゼロの場合、申告は原則不要です。

ただし、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使って税額がゼロになる場合は、申告が必要です。これらの特例は申告することで初めて適用されます。

Q. 基礎控除の計算で養子は何人まで含められる?

A. 実子がいる場合は養子1人まで、実子がいない場合は養子2人までです。

特別養子縁組の場合は実子とみなされるため、この人数制限はありません。

Q. 相続税の申告期限はいつまで?

A. 相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。

期限を過ぎると延滞税や加算税がかかる可能性があります。遺産分割が完了していなくても、期限内に申告する必要があります。

Q. 二次相続ではどんな点に注意すればいい?

A. 配偶者が亡くなったときの二次相続では、配偶者控除が使えないため税負担が大きくなりやすい点に注意が必要です。

一次相続で配偶者控除を最大限使うと、二次相続で子の税負担が増えるケースがあります。一次相続と二次相続をトータルで試算し、バランスよく遺産を分けることをおすすめします。不安がある方は税理士への相談を検討してみてください。

Q. 相続税の支払い方法は?

A. 相続税は原則として現金で一括納付です。納付期限は申告期限と同じく、相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。

現金での一括納付が難しい場合は、延納(分割払い)や物納(不動産などで納付)という方法もありますが、一定の条件を満たす必要があります。

まとめ

【この記事の結論】をおさらいします。

  • 基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
  • 法定相続人が3人なら4,800万円までは相続税がかからない
  • 2015年の改正で基礎控除が4割引き下げられ、課税対象者は約2倍に増加
  • 配偶者の税額軽減(最大1億6,000万円)や小規模宅地等の特例(最大80%減額)を活用すれば、さらに税負担を減らせる
  • 特例を使って税額がゼロでも申告は必要

相続税は計算が複雑に感じますが、まずは「遺産が基礎控除を超えるかどうか」を確認するところから始めてみてください。

遺産の評価や控除の適用について判断が難しい場合は、早めに税理士や弁護士などの専門家に相談されることをおすすめします。

関連記事


※ この記事は2026年2月時点の法令・制度にもとづく一般的な情報提供を目的としています。個別の事情については、税理士・弁護士などの専門家にご相談ください。

参考情報:
– 国税庁「No.4152 相続税の計算」
– 国税庁「No.4155 相続税の税率」
– 国税庁「No.4102 相続税がかかる場合」
– 国税庁「No.4124 小規模宅地等の特例」
– 財務省「相続税に関するQ&A」

最終更新日: 2026年2月20日