【この記事の結論】 相続放棄は、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述して行います。自分でも手続きでき、費用は3,000〜5,000円程度です。

  • 期限は3ヶ月以内 — 被相続人が亡くなったことを知った日から起算
  • 申述先は家庭裁判所 — 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
  • 費用は収入印紙800円+戸籍謄本等の実費 — 自分でやれば3,000〜5,000円程度

この記事の対象読者: 親の借金を相続したくない方、相続放棄の手続き方法を知りたい方
読んだら今日やること: 相続財産(借金を含む)を調査し、必要書類の取得を始めましょう

親が亡くなった後、「借金があることがわかった」「相続トラブルに巻き込まれたくない」という理由で相続放棄を検討する方は少なくありません。

しかし、相続放棄には期限が3ヶ月以内という厳しいルールがあります。手続きの方法を知らないまま時間が過ぎてしまうと、借金をすべて相続してしまうことになりかねません。

この記事では、相続放棄の手続きを6つのステップに分けて、必要書類・費用・注意点まで詳しく解説します。

相続放棄とは?基本を理解しよう

相続放棄とは、亡くなった方(被相続人)の財産をすべて受け継がないことを、家庭裁判所に申し出る手続きです。

相続放棄をすると、プラスの財産(預貯金・不動産など)もマイナスの財産(借金・ローンなど)も、一切相続しないことになります。

相続放棄を検討すべきケース

  • 借金が資産を上回る場合 — 明らかに借金のほうが多いとき
  • 相続トラブルを避けたい場合 — 他の相続人との争いに関わりたくないとき
  • 事業の連帯保証がある場合 — 故人が事業資金の保証人だったとき
  • 疎遠な親族の相続 — 故人と付き合いがなく、財産内容が不明なとき

相続放棄の期限

相続放棄の期限は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内です(民法915条1項)。

項目 内容
期限 3ヶ月以内(熟慮期間)
起算日 被相続人の死亡を知った日
申述先 被相続人の最後の住所地の家庭裁判所
期限に間に合わない場合 期間伸長の申立てが可能

注意: 3ヶ月の起算日は「死亡日」ではなく「死亡を知った日」です。疎遠な親族の場合、訃報を受け取った日が起算点になります。

相続放棄の手続き【6ステップ】

ステップ1: 相続財産を調査する

まず、被相続人の財産(プラス・マイナス両方)を把握しましょう。

調査対象 確認方法
預貯金 金融機関に残高証明書を請求
不動産 固定資産税の課税明細書、登記簿謄本
借金・ローン 信用情報機関(CIC・JICC・KSC)に開示請求
保証債務 契約書・通知書を確認

ポイント: 借金の有無がわからない場合は、信用情報機関に開示請求することで、金融機関からの借入れ状況を確認できます。開示請求の手数料は1機関あたり1,000円程度です。

相続手続き全体の流れについては「相続手続きを自分でやる方法」で解説しています。

ステップ2: 必要書類を集める

相続放棄の申述に必要な書類は以下の通りです。

書類 取得先 費用目安
相続放棄申述書 裁判所HPからダウンロード 無料
被相続人の住民票除票(または戸籍附票) 市区町村役場 300円
被相続人の戸籍謄本(死亡の記載があるもの) 市区町村役場 450円
申述人(自分)の戸籍謄本 市区町村役場 450円
収入印紙 郵便局・コンビニ 800円
連絡用の郵便切手 郵便局 数百円(裁判所により異なる)

補足: 被相続人の子(第1順位)以外の方(兄弟姉妹など)が相続放棄する場合は、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が追加で必要になります。

ステップ3: 相続放棄申述書を作成する

相続放棄申述書は、裁判所の公式サイトからダウンロードできます。

記入する主な項目は以下の通りです。

  • 申述人の氏名・住所・連絡先
  • 被相続人の氏名・最後の住所・死亡日
  • 相続放棄の理由(「被相続人の債務超過のため」など)
  • 相続財産の概要

相続放棄の理由の選択肢:
1. 被相続人から生前に贈与を受けている
2. 生活が安定している
3. 遺産が少ない
4. 遺産を分散させたくない
5. 債務超過のため(借金が多い場合はこれを選択)
6. その他

ステップ4: 家庭裁判所に書類を提出する

必要書類がそろったら、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。

提出方法 詳細
窓口提出 家庭裁判所の窓口に直接持参
郵送提出 書類一式を郵送(郵送でも受付可能)

管轄の家庭裁判所は、裁判所「相続の放棄の申述」のページで手続きの詳細や必要書類を確認できます。

ステップ5: 照会書に回答する

申述書を提出すると、1〜2週間後に家庭裁判所から「照会書(回答書)」が届きます。

照会書には、以下のような質問が記載されています。

  • 相続放棄は自分の意思で行っていますか?
  • 被相続人の死亡をいつ知りましたか?
  • 相続財産を処分(使用・売却など)していませんか?

重要: 照会書への回答は慎重に行ってください。「相続財産を処分した」と回答すると、相続放棄が認められない可能性があります。不安な場合は、弁護士に相談してから回答しましょう。

ステップ6: 受理通知書を受け取る

照会書の回答に問題がなければ、「相続放棄申述受理通知書」が届きます。 これで相続放棄の手続きは完了です。

通知書が届くまでの期間は、申述から約1ヶ月程度です。

なお、債権者(お金を貸している側)に相続放棄を証明する必要がある場合は、「相続放棄申述受理証明書」を家庭裁判所に請求できます(手数料: 1通150円)。

相続放棄の費用

自分でやる場合

費用項目 金額
収入印紙 800円
戸籍謄本等 1,000〜2,000円
連絡用郵便切手 数百円
合計 約3,000〜5,000円

専門家に依頼する場合

依頼先 費用目安 対応範囲
司法書士 3〜5万円 書類作成の代行
弁護士 10〜15万円 書類作成+代理申述+債権者対応

どちらに依頼すべき?

  • 書類作成だけ頼みたい → 司法書士(費用を抑えられる)
  • 債権者とのやり取りも任せたい → 弁護士(全面的に代理可能)
  • 期限が迫っている → 弁護士(迅速な対応が期待できる)

相続放棄の注意点

遺産に手をつけてはいけない

相続放棄を検討している間は、遺産を使ったり処分したりしてはいけません。

以下の行為をすると「単純承認」とみなされ、相続放棄ができなくなります。

  • 遺産の預貯金を引き出して使う
  • 被相続人の不動産を売却する
  • 被相続人の借金を遺産から返済する
  • 高価な遺品を形見として持ち帰る

ただし例外あり: 遺品の中でも経済的価値のない衣類や日用品を持ち帰る程度であれば、単純承認とはみなされません。

一度受理されると撤回できない

相続放棄が一度受理されると、原則として撤回することはできません(民法919条1項)。 「やっぱり相続したい」と思っても取り消せないため、慎重に判断しましょう。

次の相続人に影響する

相続放棄をすると、次の順位の相続人に相続権が移ります。

順位 相続人 全員が放棄すると
第1順位 第2順位(父母)に移る
第2順位 父母 第3順位(兄弟姉妹)に移る
第3順位 兄弟姉妹 相続人がいなくなる

借金が理由で相続放棄する場合は、次の順位の相続人にもその旨を伝えておきましょう。知らないうちに借金を相続してしまうトラブルを防げます。

期限に間に合わない場合

3ヶ月以内に判断できない場合は、家庭裁判所に「期間伸長の申立て」ができます。

項目 内容
申立先 被相続人の最後の住所地の家庭裁判所
費用 収入印紙800円+連絡用郵便切手
申立期限 熟慮期間(3ヶ月)の満了前

期間伸長が認められるのは、財産調査に時間がかかる場合や、相続関係が複雑な場合です。3ヶ月を過ぎてからでは申立てできませんので、早めに対応しましょう。

よくある質問(FAQ)

Q. 相続放棄は自分でできる?

A. はい、自分で手続きできます。 必要書類を集めて家庭裁判所に提出するだけなので、費用は3,000〜5,000円程度です。ただし、書類の不備や照会書への回答ミスで不受理になるリスクもあるため、不安な方は司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。

Q. 相続放棄すると生命保険はどうなる?

A. 受取人が指定されている生命保険金は、相続放棄をしても受け取れます。 受取人が「〇〇(個人名)」と指定されている場合、その保険金は相続財産ではなく受取人固有の財産です。ただし、受取人が「法定相続人」や「被相続人」となっている場合は注意が必要ですので、保険会社に確認してください。

Q. 3ヶ月を過ぎたら絶対に相続放棄できない?

A. 原則としてできませんが、例外があります。 3ヶ月を過ぎた後でも、「被相続人に借金があることを知らなかった」などの特別な事情がある場合は、相続放棄が認められることがあります。この場合は弁護士に相談し、事情を説明した上で申述書を提出してください。

Q. 相続放棄した後に借金の請求が来たらどうする?

A. 「相続放棄申述受理証明書」を債権者に提示してください。 証明書は家庭裁判所で1通150円で取得できます。証明書を見せれば、債権者はそれ以上請求できません。親が亡くなった後の全体的な手続きについては「親が亡くなったらすることリスト」も参考にしてください。

まとめ

相続放棄の手続きは、以下の6ステップで進めます。

  1. 相続財産を調査する — 借金を含めた全財産を把握
  2. 必要書類を集める — 戸籍謄本・住民票除票・収入印紙など
  3. 相続放棄申述書を作成する — 裁判所HPからダウンロード
  4. 家庭裁判所に提出する — 被相続人の最後の住所地を管轄する裁判所
  5. 照会書に回答する — 家庭裁判所からの確認に対応
  6. 受理通知書を受け取る — 約1ヶ月で届く

最も重要なのは「期限は3ヶ月以内」ということです。 期限を過ぎると原則として相続放棄できなくなりますので、借金の可能性がある場合は早めに行動しましょう。

相続全体の進め方については「相続手続きを自分でやる方法」、相続税の基準については「相続税はいくらからかかる?基礎控除を解説」もあわせてご覧ください。


この記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の事案については、弁護士や司法書士などの専門家にご相談ください。

参考情報・出典