【この記事の結論】 公正証書遺言の費用は公証人手数料+実費で、財産5,000万円の場合は約7〜8万円が目安です。

  • 公証人手数料は財産価額で決まる — 受取人ごとに計算し合算する方式
  • 遺言加算13,000円 — 全体財産1億円以下の場合に加算(2025年10月改正)
  • 証人2名が必要 — 公証役場で紹介してもらうことも可能

この記事の対象読者: 遺言書の作成を検討中の方、公正証書遺言の費用を知りたい方
読んだら今日やること: お近くの公証役場に電話で費用の見積もりを相談しましょう

「遺言書を作りたいけれど、公正証書遺言はいくらかかるのだろう」と気になっている方は多いのではないでしょうか。

この記事では、公正証書遺言の費用(手数料一覧表付き)と手続きの流れを、必要書類・証人の手配方法まで含めて解説します。

公正証書遺言とは?自筆証書遺言との違い

公正証書遺言とは、公証人(法律の専門家)が遺言者の意思を聞き取り、公証役場で作成する遺言書です。

自分で全文を手書きする「自筆証書遺言」と異なり、法律のプロが関与するため、方式の不備で無効になるリスクがほとんどありません。

公正証書遺言の特徴

  • 公証人が内容を確認して作成するため、法的に確実
  • 原本が公証役場に保管されるため、紛失・改ざんの心配がない
  • 家庭裁判所での検認手続きが不要
  • 字が書けない方でも作成できる

自筆証書遺言との比較表

項目 公正証書遺言 自筆証書遺言
作成方法 公証人が作成 自分で全文手書き
費用 数万円〜 無料(保管制度利用時3,900円)
証人 2名必要 不要
検認 不要 必要(法務局保管制度利用時は不要)
無効リスク 極めて低い 方式不備で無効の危険がある
改ざんリスク なし(原本保管) あり(自宅保管の場合)
秘密性 証人に内容が知られる 完全に秘密にできる

自筆証書遺言の書き方については「遺言書の書き方|自筆証書遺言の書き方を解説」で詳しく解説しています。

公正証書遺言の費用はいくら?手数料一覧表

公正証書遺言の費用は「公証人手数料」+「実費」で構成され、財産額が5,000万円の場合は合計7〜8万円が目安です。

公証人手数料の基本

手数料は、財産を受け取る人ごとに財産価額を計算し、以下の表に当てはめて合算します。

財産価額 手数料
50万円以下 3,000円
50万円超〜100万円以下 5,000円
100万円超〜200万円以下 7,000円
200万円超〜500万円以下 13,000円
500万円超〜1,000万円以下 20,000円
1,000万円超〜3,000万円以下 26,000円
3,000万円超〜5,000万円以下 33,000円
5,000万円超〜1億円以下 49,000円

ポイント: 手数料は遺言書全体ではなく、「財産を受け取る人ごと」に計算します。妻と長男に財産を分ける場合、妻の分と長男の分をそれぞれ計算して合算します。

遺言加算とは?

全体の財産が1億円以下の場合、基本手数料に13,000円が加算されます。 これを「遺言加算」といいます。

2025年10月の改正で、遺言加算は11,000円から13,000円に引き上げられました。

その他の実費

費用項目 金額
用紙代(原本3枚超過分) 1枚300円
正本・謄本(書面) 1枚300円
正本・謄本(電子データ) 各1通2,500円
出張費(公証人の日当) 1日2万円(4時間以内1万円)
出張時の交通費 実費

費用の計算例

例: 妻に3,000万円、長男に2,000万円を相続させる場合

項目 計算 金額
妻分(3,000万円) 1,000万超〜3,000万以下 26,000円
長男分(2,000万円) 1,000万超〜3,000万以下 26,000円
遺言加算(合計5,000万円<1億円) 13,000円
用紙代・正本謄本代(目安) 約3,000円
合計 約68,000円

専門家に依頼する場合の費用

公正証書遺言の作成を専門家に依頼すると、公証人手数料とは別に報酬が発生します。

行政書士・司法書士・弁護士の費用比較

依頼先 費用目安 対応範囲
行政書士 3〜10万円 書類収集・遺言案文の作成・証人手配
司法書士 5〜15万円 上記+不動産登記の事前確認
弁護士 10〜30万円 上記+法的アドバイス・紛争予防

どの専門家に依頼すべき?

  • 財産がシンプルで争いの心配がない → 行政書士(費用を抑えられる)
  • 不動産が含まれる → 司法書士(登記手続きまで見据えたアドバイス)
  • 相続人間で争いの可能性がある → 弁護士(法的な紛争予防策まで対応)

公正証書遺言の手続き【7ステップ】

ステップ1: 遺言内容を決める

まず、自分の財産を洗い出し、誰に何を相続させるかを決めましょう。

確認すべき財産の一覧です。

財産の種類 確認方法
預貯金 通帳・残高証明書
不動産 固定資産税の課税明細書・登記簿謄本
有価証券 証券会社の残高報告書
生命保険 保険証券
借金・ローン 返済明細書

ステップ2: 必要書類を集める

公証役場に持参する書類を準備します。

書類 取得先 費用目安
遺言者の印鑑登録証明書 市区町村役場 300円
遺言者と相続人の関係がわかる戸籍謄本 市区町村役場 450円
受遺者(相続人以外に遺贈する場合)の住民票 市区町村役場 300円
不動産の登記事項証明書 法務局 600円
固定資産評価証明書 市区町村役場 300〜400円
預貯金の残高がわかる資料 通帳コピーでも可
証人2名の氏名・住所・生年月日・職業 事前に確認

ステップ3: 公証役場に連絡・予約する

お近くの公証役場に電話またはメールで連絡し、遺言書作成の予約をします。

公証役場は全国に約300カ所あります。日本公証人連合会「遺言」のページで、公証役場の検索や手数料の詳細を確認できます。

補足: 予約時に「遺言書を作りたい」と伝えると、必要書類の案内を受けられます。初回相談は無料の公証役場がほとんどです。

ステップ4: 公証人と打ち合わせする

必要書類を持参し、公証人と遺言の内容を打ち合わせします。 打ち合わせは通常1〜3回で、電話やFAXでのやり取りも可能です。

打ち合わせで決めること:

  • 財産の分け方(誰に何を相続させるか)
  • 遺言執行者の指定(相続手続きを実行する人)
  • 付言事項(家族へのメッセージなど、法的効力はないが想いを伝える部分)

ステップ5: 証人2名を手配する

公正証書遺言の作成当日には、証人2名の立会いが必要です。

証人になれない人:

  • 未成年者
  • 推定相続人・受遺者
  • 推定相続人・受遺者の配偶者と直系血族
  • 公証人の配偶者・四親等内の親族・書記・使用人

適当な証人がいない場合は? 公証役場に相談すると、証人を紹介してもらえます。費用は1人あたり6,000〜15,000円程度です。専門家(行政書士・司法書士・弁護士)に依頼している場合は、事務所のスタッフが証人を務めてくれることもあります。

ステップ6: 作成当日に公証役場へ行く

作成当日は、遺言者本人・証人2名が公証役場に集まります。

当日の流れ:

  1. 公証人が遺言の内容を読み上げる
  2. 遺言者が内容を確認し、間違いがないことを承認する
  3. 遺言者・証人2名が署名・押印する(遺言者は実印)
  4. 公証人が署名・押印し、方式に従って作成した旨を付記する

所要時間は30分〜1時間程度です。

補足: 体が不自由で公証役場に行けない場合は、公証人が自宅・病院・介護施設に出張して作成できます。出張費用として日当(1日2万円、4時間以内1万円)と交通費がかかります。

ステップ7: 正本・謄本を受け取って保管する

作成が完了すると、遺言書の「正本」と「謄本」が交付されます。

種類 保管場所 説明
原本 公証役場 公証役場が保管。紛失・改ざんの心配なし
正本 遺言者または遺言執行者 原本と同じ効力を持つ
謄本 遺言者の控え 内容の確認用

正本は遺言執行者に渡しておくか、信頼できる場所に保管しましょう。万が一紛失しても、公証役場に原本があるため再発行が可能です。

相続手続き全体の流れについては「相続手続きを自分でやる方法」もあわせてご覧ください。

公正証書遺言の注意点

証人になれない人に注意

証人の条件を満たさない人が立ち会うと、遺言そのものが無効になる可能性があります。親族に頼む場合は、推定相続人や受遺者に該当しないか必ず確認してください。

遺言の変更・撤回は可能

公正証書遺言は一度作成した後でも、いつでも変更・撤回が可能です。新しい遺言書を作成すれば、前の遺言書は自動的に撤回したものとみなされます。

ただし、変更のたびに公証人手数料がかかるため、財産内容や相続人に大きな変更があったときに見直すのがよいでしょう。

費用を抑えるコツ

  • 必要書類は自分で集める — 専門家に全て任せるより費用を抑えられる
  • 遺言案文を自分で作成する — 公証人との打ち合わせがスムーズになる
  • 証人は知人に依頼する — 公証役場や専門家の紹介より費用がかからない

よくある質問(FAQ)

Q. 公正証書遺言はどこで作る?

A. お近くの公証役場で作成します。 公証役場は全国に約300カ所あり、日本公証人連合会のウェブサイトで検索できます。住所地に関係なく、どの公証役場でも作成可能です。

Q. 作成にどのくらい時間がかかる?

A. 最初の相談から完成まで、通常2〜4週間程度です。 公証人との打ち合わせが1〜3回必要で、書類の準備期間も含めるとこの程度かかります。急ぎの場合は公証人に相談してください。

Q. 体が不自由でも作れる?

A. はい、作れます。 公証人が自宅・病院・介護施設に出張して作成できます。字が書けない場合は公証人が代筆し、署名の代わりに押印で対応できます。出張費用として日当と交通費がかかります。

Q. 公正証書遺言と自筆証書遺言は両方作れる?

A. はい、両方作成することは可能です。 ただし、同じ財産について異なる内容の遺言がある場合、日付が新しい遺言が優先されます。混乱を避けるため、新しい遺言を作成したら古い遺言は撤回しておくことをおすすめします。

まとめ

公正証書遺言の費用と手続きのポイントを振り返ります。

  1. 費用は財産価額で決まる — 財産5,000万円の場合で約7〜8万円が目安
  2. 手続きは7ステップ — 遺言内容の決定から正本の受け取りまで
  3. 証人2名が必要 — 公証役場で紹介してもらうことも可能
  4. 作成期間は2〜4週間 — 公証人との打ち合わせを含めて
  5. 変更・撤回はいつでも可能 — 新しい遺言書を作れば前のものは撤回される

費用はかかりますが、法的に確実で検認も不要な公正証書遺言は、相続トラブルの防止に効果的です。

相続税の基礎控除については「相続税はいくらからかかる?基礎控除を解説」、遺産の分け方については「遺産分割協議書の書き方」もあわせてご覧ください。


この記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の事案については、弁護士や司法書士などの専門家にご相談ください。

参考情報・出典