【この記事の結論】 財産目録は法律で決まった書式がなく自分で作成でき、不動産・預貯金・有価証券・生命保険・負債の5カテゴリで整理します。

  • 5カテゴリで財産を網羅 — 不動産・預貯金・有価証券・生命保険・負債を一覧にまとめ、漏れなく記録
  • 2019年の民法改正でパソコン作成が可能に — 自筆証書遺言の添付用でもPC作成OK。ただし全ページに署名・押印が必要
  • テンプレートと記入例で誰でも作れる — 金融機関名・所在地など「特定できる情報」を記入するだけ

この記事の対象読者: 財産目録を初めて作る方、遺言書に添付する財産目録の書き方を知りたい方

読んだら今日やること: まず銀行口座と保険証券を手元に集め、財産の全体像を把握しましょう

財産目録とは — 作成が必要なケースを解説

財産目録とは、ある時点における財産の内容を一覧にまとめた書類のことです。プラスの財産(不動産や預貯金など)だけでなく、マイナスの財産(借金やローンなど)も含めて記録します。

法律で定められた書式はありません。そのため、自分で自由に作成できます。

財産目録が必要になる5つのケース

以下のような場面で財産目録があると、手続きがスムーズに進みます。

ケース なぜ必要か
遺言書の作成 遺言の内容を具体的に書くための基礎資料
遺産分割協議 相続人全員で「何をどう分けるか」を話し合う際の前提
相続税の申告 税理士への依頼時に財産の全体像を伝える資料
相続放棄の判断 プラスとマイナスの財産を比較して判断する材料
終活の準備 家族に財産情報を残しておくための記録

相続手続きの全体像については「相続手続きを自分でやる方法|完全ガイド」もご覧ください。


財産目録の作り方 — 5つのステップ

財産目録は、次の5つのステップで作成します。

ステップ1: 財産をリストアップする

まずは、自分の財産をすべて書き出します。通帳・不動産の権利証・保険証券・ローンの契約書などを手元に集めましょう。

集める書類の例:
– 預貯金通帳・定期預金証書
– 不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)
– 固定資産税の納税通知書
– 証券会社の取引報告書
– 生命保険の保険証券
– 自動車の車検証
– ローンや借金の契約書・残高証明書

ステップ2: カテゴリに分類する

集めた財産を、次の7つのカテゴリに分類します。

  1. 不動産(土地・建物)
  2. 預貯金・現金
  3. 有価証券(株式・投資信託など)
  4. 生命保険
  5. 自動車・貴金属・その他の動産
  6. その他の資産(会員権・貸付金など)
  7. 負債(借金・ローン・未払金など)

ステップ3: 各財産の詳細を調べる

カテゴリごとに、財産を特定できる情報を調べます。「〇〇銀行に預金がある」だけでは不十分です。支店名・口座番号・残高まで記録しましょう。

ステップ4: テンプレートに記入する

この記事で紹介するテンプレートに、調べた情報を記入していきます。

ステップ5: 評価額の基準日を記載する

財産の評価額は日々変動します。「いつの時点の金額か」を必ず記載してください。基準日がないと、後で相続人同士の認識にずれが生じ、トラブルの原因になります。


【テンプレート】カテゴリ別の書き方と記入例

ここから、カテゴリ別に具体的な書き方とテンプレートを紹介します。

1. 不動産(土地)

項目 記入内容
種類 土地
所在 東京都〇〇区△△町1丁目2番3号
地番 2番3
地目 宅地
地積 150.25㎡
持分 全部(または共有持分2分の1)
固定資産税評価額 3,000万円
備考 自宅敷地

ポイント: 所在や地番は、住所ではなく登記事項証明書に記載されている情報をそのまま転記します。住居表示と地番は異なるので注意しましょう。

2. 不動産(建物)

項目 記入内容
種類 建物
所在 東京都〇〇区△△町1丁目2番地3
家屋番号 2番3
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積 1階 70.50㎡ / 2階 65.30㎡
固定資産税評価額 1,200万円
備考 自宅建物

不動産の相続手続きについて詳しくは「土地・不動産の相続手続きと名義変更の方法」をご覧ください。

3. 預貯金・現金

項目 記入内容
金融機関名 〇〇銀行
支店名 △△支店
口座種別 普通預金
口座番号 1234567
残高 5,230,000円
備考 年金受取口座

記入例(複数口座がある場合):

No. 金融機関・支店 口座種別 口座番号 残高
1 〇〇銀行 △△支店 普通 1234567 5,230,000円
2 △△銀行 ××支店 定期 7654321 10,000,000円
3 ゆうちょ銀行 通常貯金 12345-67890 1,500,000円
合計 16,730,000円

ポイント: 残高は相続開始日(死亡日)の残高を記載するのが原則です。終活で生前に作成する場合は、作成日の残高を記載し、基準日を明記しましょう。

4. 有価証券

項目 記入内容
証券会社名 〇〇証券 △△支店
銘柄 株式会社□□
株数 1,000株
評価額 2,500,000円
備考 NISA口座

記入例(複数銘柄がある場合):

No. 証券会社 種類 銘柄 数量 評価額
1 〇〇証券 株式 □□株式会社 1,000株 2,500,000円
2 〇〇証券 投資信託 △△ファンド 500口 3,000,000円
3 △△証券 国債 個人向け国債 1,000,000円
合計 6,500,000円

5. 生命保険

項目 記入内容
保険会社名 〇〇生命保険
証券番号 A-12345678
保険種類 終身保険
契約者 本人
被保険者 本人
死亡保険金額 5,000,000円
受取人 配偶者 △△ 花子

注意: 生命保険金は、受取人が指定されている場合、遺産分割の対象にはなりません。ただし、相続税の計算では「みなし相続財産」として課税対象になります。

6. その他の資産

種類 内容 評価額
自動車 トヨタ △△ 2020年式(登録番号: 品川 300 あ 1234) 800,000円
貴金属 金のネックレス 18K 約50g 500,000円
ゴルフ会員権 〇〇カントリークラブ 正会員 300,000円

7. 負債(マイナスの財産)

種類 借入先 残高 返済条件
住宅ローン 〇〇銀行 12,000,000円 毎月8万円 / 残り10年
カードローン △△カード 500,000円 リボ払い
未払い税金 〇〇市 80,000円 固定資産税(第4期分)
合計 12,580,000円

ポイント: 負債も忘れずに記載しましょう。マイナスの財産がプラスの財産を上回る場合は、相続放棄を検討する必要があります。


財産の合計額を計算する

すべてのカテゴリの記入が終わったら、合計額を計算します。

区分 金額
プラスの財産合計 ○○円
マイナスの財産合計 ○○円
純資産(差引合計) ○○円

この「純資産」が、おおよその相続財産の総額です。相続税の基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)を超えるかどうかの判断材料にもなります。

相続税の基礎控除や計算方法については「相続税対策は生前がカギ!7つの節税方法をわかりやすく解説」もご覧ください。


自筆証書遺言に添付する財産目録の注意点

自筆証書遺言を作成する方にとって、財産目録のルールは重要です。2019年1月13日の民法改正で、ルールが大きく変わりました。

改正前と改正後の比較

項目 改正前(2019年1月12日以前) 改正後(2019年1月13日以降)
財産目録の作成方法 すべて手書き パソコンで作成OK
代筆 不可 可能
通帳のコピー添付 不可 可能
登記事項証明書のコピー添付 不可 可能

守るべき3つのルール

改正後も、以下の3つのルールは必ず守ってください。

1. 全ページに署名・押印

パソコンで作成した場合やコピーを添付した場合でも、すべてのページに遺言者が自筆で署名し、押印しなければなりません。

2. 遺言書本文は手書き

財産目録はパソコンOKですが、遺言書の本文は引き続き「全文を自筆」する必要があります。

3. 本文と財産目録は別の用紙

財産目録をパソコンで作成する場合は、遺言書本文とは別の用紙にする必要があります。同じ用紙に本文と財産目録を混在させることはできません。

自筆証書遺言の書き方については「遺言書の書き方|自筆証書遺言のルールと書き方を完全解説」をご覧ください。


用途別の作成ポイント

財産目録の使い方によって、記載の細かさや重視するポイントが異なります。

用途 重視するポイント 評価額の基準
遺言書の添付 財産の特定(金融機関名・口座番号など) 作成日時点
遺産分割協議 全財産の漏れなき網羅 相続開始日(死亡日)時点
相続税の申告 正確な評価額 相続開始日時点の時価
終活ノート 財産の所在地・保管場所の情報 おおよその金額でOK

終活で作成する場合のコツ

終活の一環として財産目録を作る場合は、評価額はおおよそで構いません。それよりも大切なのは、どこに何があるかを家族がわかるようにすることです。

  • 通帳や印鑑の保管場所
  • ネットバンキングのログイン情報(IDのみ。パスワードは別管理)
  • 証券会社のお客様番号
  • 保険証券の保管場所
  • 貸金庫がある場合はその所在と鍵の保管場所

よくある間違いと注意点

1. 住所と地番を混同する

不動産の記載でよくある間違いです。私たちが普段使う「住所(住居表示)」と、登記簿に記載されている「地番」は異なります。財産目録には、登記事項証明書の記載通りに書きましょう。

2. 生命保険を「遺産」として記載する

受取人が指定されている生命保険金は、法律上は遺産分割の対象外です。ただし、財産目録には記載しておくのがおすすめです。相続税の計算では課税対象になるため、全体像の把握に必要です。

3. 負債を記載し忘れる

住宅ローン、カードローン、未払いの税金なども忘れずに記載しましょう。マイナスの財産を把握しないまま遺産分割を進めると、後からトラブルになることがあります。

4. 評価額の基準日を書かない

株式や不動産など、価値が変動する財産は「いつの時点の評価額か」を必ず明記してください。

遺言書の作成を専門家に依頼したい場合は「遺言書の作成は誰に頼む?費用相場と選び方」をご覧ください。


よくある質問(FAQ)

Q. 財産目録に決まった書式はありますか?

法律で定められた書式はありません。自由なフォーマットで作成できます。ただし、裁判所のWebサイトに遺産分割調停用のテンプレートが公開されていますので、参考にするとよいでしょう。この記事で紹介したカテゴリ別のテンプレートもそのままご活用いただけます。

Q. 財産目録は手書きでなければいけませんか?

いいえ、パソコンで作成して問題ありません。自筆証書遺言に添付する財産目録も、2019年の民法改正によりパソコンでの作成が認められています。ただし、遺言書に添付する場合は全ページに自筆の署名と押印が必要です。

Q. 生命保険は財産目録に書くべきですか?

書いておくことをおすすめします。受取人が指定されている生命保険金は遺産分割の対象外ですが、相続税の計算では「みなし相続財産」として課税対象になります。また、家族が保険の存在を知らずに請求漏れになるケースもあるため、記録しておくと安心です。

Q. 財産目録はいつ作り直すべきですか?

大きな財産の変動があったときに見直すのがおすすめです。たとえば、不動産の売買、大きな預貯金の移動、新たなローンの契約、保険の解約・加入などのタイミングです。終活として作成する場合は、年に1回程度の見直しを目安にしましょう。

Q. 財産目録の作成を専門家に依頼できますか?

はい、税理士・行政書士・司法書士・弁護士に依頼できます。特に不動産の評価が必要な場合は税理士、遺言書作成と併せて依頼する場合は弁護士や司法書士がおすすめです。費用の目安は3〜10万円程度です。


この記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な相続手続きについては、税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。

最終更新日: 2026年2月23日

参考情報・出典