【この記事の結論】 遺留分とは相続人に保障された最低限の取り分で、遺産の1/2(直系尊属のみの場合は1/3)が総体的な割合です。
- 遺留分の割合 — 配偶者+子2人の場合、配偶者1/4・子は各1/8
- 計算方法 — 遺産額+生前贈与−借金=基礎財産額×割合で算出
- 侵害額請求の時効 — 相続開始+侵害を知ってから1年以内に請求が必要
この記事の対象読者: 遺言書の内容に不満がある方、自分の遺留分がいくらか知りたい方、遺留分を請求すべきか迷っている方 読んだら今日やること: 相続財産の総額を確認し、一覧表で自分の遺留分割合を調べましょう
「遺留分って何だろう?」「自分はいくらもらえるの?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、遺留分の意味をわかりやすく解説し、ケース別の割合一覧表や具体的な計算例を交えてご紹介します。侵害された場合の請求手順や放棄の方法まで、まとめて確認できます。
遺留分とは?どんな制度なの?
遺留分(いりゅうぶん)とは、一定の相続人に法律で保障された「最低限の取り分」のことです(民法第1042条)。
たとえば、亡くなった方が「全財産を友人に遺贈する」という遺言書を残していた場合でも、配偶者や子どもは遺留分を請求することで、一定の財産を受け取れます。
遺留分は、残された家族の生活を守るために設けられた制度です。遺言書の内容がどのようなものであっても、遺留分の範囲は法律で保護されています。
遺留分が認められる相続人は誰?
遺留分が認められるのは、以下の相続人です。
| 相続人 | 遺留分 |
|---|---|
| 配偶者 | あり |
| 子(代襲相続人を含む) | あり |
| 直系尊属(父母・祖父母) | あり |
| 兄弟姉妹 | なし |
兄弟姉妹には遺留分がありません。 これは相続で最も間違えやすいポイントの一つです。
兄弟姉妹が相続人となるケースでは、遺言書で「全財産を配偶者に」と書かれていた場合、兄弟姉妹は遺留分を主張できません。
遺留分の割合はどのくらい?【ケース別一覧表】
遺留分の割合は、相続人の組み合わせによって変わります。 総体的遺留分は遺産全体の1/2が基本で、直系尊属のみが相続人の場合は1/3です。
相続人の組み合わせ別|遺留分割合の早見表
以下の一覧表で、ご自身のケースに当てはまる割合を確認してください。
| 相続人の構成 | 総体的遺留分 | 配偶者 | 子1人 | 子2人(各) | 子3人(各) | 父母(各) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 配偶者のみ | 1/2 | 1/2 | – | – | – | – |
| 配偶者+子1人 | 1/2 | 1/4 | 1/4 | – | – | – |
| 配偶者+子2人 | 1/2 | 1/4 | – | 1/8 | – | – |
| 配偶者+子3人 | 1/2 | 1/4 | – | – | 1/12 | – |
| 子1人のみ | 1/2 | – | 1/2 | – | – | – |
| 子2人のみ | 1/2 | – | – | 1/4 | – | – |
| 子3人のみ | 1/2 | – | – | – | 1/6 | – |
| 配偶者+父母 | 1/2 | 1/3 | – | – | – | 1/12 |
| 父母のみ | 1/3 | – | – | – | – | 1/6 |
配偶者と子がいる場合の割合は?
最も多いケースは「配偶者+子」の組み合わせです。
この場合、総体的遺留分は遺産全体の1/2です。配偶者の法定相続分(1/2)の半分である1/4が配偶者の遺留分となります。
子どもの遺留分は、残りの1/4を子どもの人数で均等に分けます。子どもが2人なら各1/8、3人なら各1/12です。
子だけの場合・親だけの場合の割合は?
子だけが相続人の場合は、総体的遺留分1/2を子どもの人数で均等に分けます。子どもが2人なら各1/4です。
親(直系尊属)だけが相続人の場合は、総体的遺留分が1/3と小さくなります。父母2人なら各1/6です。
ポイント 遺留分の割合を求めるには「総体的遺留分 × 法定相続分」で計算します。 例: 配偶者+子2人 → 配偶者の遺留分 = 1/2 × 1/2 = 1/4
遺留分はどう計算する?3ステップで解説
遺留分侵害額の計算は「基礎財産額の確定→割合の確認→侵害額の算出」の3ステップで行います。
ステップ1|基礎財産額を計算する
まず、遺留分を計算するための基礎となる財産額を求めます(民法第1043条)。
計算式:
基礎財産額 = 相続開始時の財産 + 生前贈与の財産 − 債務(借金)
ここで注意したいのは、生前贈与の算入ルールです。2019年の民法改正により、以下のように期間が定められました(民法第1044条)。
| 贈与の相手 | 算入される期間 |
|---|---|
| 相続人以外 | 相続開始前1年間 |
| 相続人(特別受益) | 相続開始前10年間 |
| 遺留分侵害を知ってした贈与 | 期間制限なし |
ステップ2|自分の遺留分割合を確認する
前のセクションの一覧表から、ご自身の遺留分割合を確認します。
ステップ3|遺留分侵害額を算出する
計算式:
自分の遺留分額 = 基礎財産額 × 個別的遺留分割合
遺留分侵害額 = 自分の遺留分額 − 実際に取得した財産
【計算例1】シンプルなケース
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 遺産総額 | 5,000万円 |
| 借金 | なし |
| 生前贈与 | なし |
| 相続人 | 配偶者+子2人 |
| 遺言内容 | 全財産を長男に |
計算: – 基礎財産額 = 5,000万円 – 配偶者の遺留分 = 5,000万円 × 1/4 = 1,250万円 – 次男の遺留分 = 5,000万円 × 1/8 = 625万円
配偶者と次男は、それぞれ遺留分侵害額請求で上記の金額を長男に請求できます。
【計算例2】生前贈与・借金ありのケース
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 相続開始時の財産 | 3,000万円 |
| 生前贈与(5年前、長男へ) | 500万円 |
| 借金 | 200万円 |
| 相続人 | 子2人(長男・次男) |
| 遺言内容 | 全財産を長男に |
計算: – 基礎財産額 = 3,000万円 + 500万円 − 200万円 = 3,300万円 – 次男の遺留分 = 3,300万円 × 1/4 = 825万円
次男は長男に対して825万円を請求できます。長男がすでに受け取った生前贈与500万円も基礎財産に含まれている点がポイントです。
遺留分が侵害されたらどう請求する?
遺留分が侵害されている場合は「遺留分侵害額請求」によって金銭の支払いを求めることができます(民法第1046条)。
遺留分侵害額請求とは?
遺留分侵害額請求とは、遺留分を侵害された相続人が、侵害した相手に対して金銭の支払いを求める制度です。
2019年7月1日の民法改正で、それまでの「遺留分減殺請求」から「遺留分侵害額請求」に制度が変わりました。
| 項目 | 改正前(減殺請求) | 改正後(侵害額請求) |
|---|---|---|
| 請求内容 | 現物返還が原則 | 金銭の支払いのみ |
| 不動産の扱い | 共有状態になる | 共有にならない |
| トラブルリスク | 共有でもめやすい | 金銭で解決しやすい |
改正後は金銭で解決する仕組みになったため、不動産が共有状態になるトラブルが減りました。
請求の手順|内容証明から訴訟までの流れ
遺留分侵害額請求は、以下のステップで進めます。
ステップ1: 内容証明郵便で意思表示 まずは相手方に内容証明郵便を送ります。これにより「請求した」という証拠が残り、時効の進行を止められます。
ステップ2: 当事者間の話し合い(協議) 相手方と金額や支払い方法について話し合います。合意に至れば合意書を作成します。
ステップ3: 家庭裁判所での調停 話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てます。調停委員が間に入って解決をめざします。
ステップ4: 訴訟(裁判) 調停でも解決しない場合は、地方裁判所に訴訟を提起します。
ポイント 最初から弁護士に相談するのがおすすめです。 内容証明郵便の作成や交渉を任せることで、スムーズに進められます。
請求の時効は?いつまでに行動すればいい?
遺留分侵害額請求には、2つの期限があります。
| 期限 | 起算点 | 期間 |
|---|---|---|
| 消滅時効 | 相続開始+遺留分侵害を知った時 | 1年 |
| 除斥期間 | 相続開始の時 | 10年 |
「知った時から1年」は非常に短い期限です。 遺言書の内容を知ったら、早めに行動することが大切です。
時効を止めるには、期限内に内容証明郵便で請求の意思表示をしましょう。ただし、意思表示後も協議が長引く場合は、別途「時効の完成猶予」の手続きが必要です。
遺留分は放棄できる?手続きと注意点
遺留分は放棄することも可能です。ただし、相続の前と後で手続きが異なります。
生前に放棄する場合の手続き
被相続人がまだ存命のうちに遺留分を放棄するには、家庭裁判所の許可が必要です(民法第1049条)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申立先 | 被相続人の住所地の家庭裁判所 |
| 申立人 | 遺留分を放棄する相続人本人 |
| 必要書類 | 申立書、被相続人の戸籍謄本、申立人の戸籍謄本 |
| 費用 | 収入印紙800円+切手代 |
家庭裁判所は、以下の3つの基準で許可するかどうかを判断します。
- 放棄が本人の真意に基づいているか
- 放棄に合理性と必要性があるか
- 放棄の代償(見返り)が支払われているか
たとえば「すでに生前贈与で十分な財産を受け取っている」場合は、許可されやすい傾向があります。
相続開始後に放棄する場合
相続が開始した後であれば、家庭裁判所の許可は不要です。自分の意思で自由に遺留分を放棄できます。
ただし、遺留分の放棄と相続放棄は別の制度です。
| 項目 | 遺留分の放棄 | 相続放棄 |
|---|---|---|
| 放棄する内容 | 遺留分の権利のみ | 相続権すべて |
| 相続人の地位 | 残る | なくなる |
| 借金の責任 | 負う | 負わない |
| 手続き | 相続開始後は自由 | 家裁への申述が必要 |
よくある質問
Q. 遺留分を侵害する遺言書は無効になるの?
A. いいえ、遺言書自体は無効になりません。遺留分を侵害する遺言書も有効です。ただし、遺留分権利者は「遺留分侵害額請求」をすることで、侵害された分の金銭を請求できます。請求するかしないかは相続人の自由です。
Q. 遺留分の請求にかかる費用はどのくらい?
A. 自分で内容証明郵便を送る場合は数千円程度です。弁護士に依頼する場合は、着手金10万〜30万円程度、成功報酬が取得額の10〜20%程度が目安です。金額が大きい場合は弁護士費用を差し引いてもメリットがあるケースが多いです。
Q. 遺留分と法定相続分の違いは?
A. 法定相続分は「遺言がない場合に法律で定められた相続割合」です。遺留分は「遺言があっても侵害できない最低限の取り分」です。遺留分は法定相続分の半分(直系尊属のみの場合は1/3)が目安になります。
Q. 代襲相続人にも遺留分はあるの?
A. はい、あります。子が被相続人より先に亡くなっている場合、その子(被相続人の孫)が代襲相続人となり、親の遺留分を引き継ぎます。ただし、兄弟姉妹の代襲相続人(甥・姪)には遺留分はありません。
まとめ
遺留分について、【この記事の結論】を振り返ります。
- 遺留分とは、一定の相続人に法律で保障された最低限の取り分
- 割合は相続人の組み合わせで異なる(配偶者+子2人なら配偶者1/4、子は各1/8)
- 計算は「基礎財産額 × 遺留分割合」で求められる
- 侵害された場合は「遺留分侵害額請求」で金銭を請求できる
- 時効は「知った時から1年」と短いため、早めの対応が大切
遺留分の問題は感情的になりやすく、家族間の関係に影響を及ぼすこともあります。「自分の遺留分はいくらだろう?」と気になったら、まずは相続財産の全体像を把握し、必要に応じて弁護士や司法書士など専門家に相談してみましょう。
遺言書の書き方について知りたい方は「遺言書の書き方(自筆証書遺言)」も参考にしてください。相続手続きの全体像は「相続手続きを自分でやる方法」でくわしく解説しています。
※ この記事は一般的な情報提供を目的としています。 個別の事情については、弁護士・司法書士・税理士などの専門家にご相談ください。
最終更新日: 2026年2月21日
参考情報・出典
