【この記事の結論】 遺産分割協議書は決まった書式はありませんが、相続人全員の署名・実印が法的に必須です。

  • 事前準備が重要 — 作成前に「相続人の確定」と「財産の洗い出し」を済ませておく
  • 財産は正確に記載 — 登記事項証明書や口座情報をもとに、所在地・口座番号まで正確に書く
  • 後日判明した財産への対応も記載 — 「その他の財産は○○が取得する」等の一文を入れてトラブル防止

この記事の対象読者: 初めて遺産分割協議書を作成する方、書き方のルールを確認したい方

読んだら今日やること: 相続人の戸籍謄本を集めて、相続人の確定作業から始めましょう





「遺産分割協議書って、どうやって書けばいいの?」と悩んでいませんか。

遺産分割協議書とは、亡くなった方の財産を相続人全員でどう分けるか話し合った結果を記録する大切な書類です。不動産の名義変更や銀行口座の解約など、さまざまな相続手続きで提出を求められます。

書き方にはいくつかの決まりがあり、不備があると手続きが進まなかったり、無効になったりするケースもあります。

この記事では、遺産分割協議書の書き方を5つのステップで分かりやすく解説します。財産の種類別テンプレートやよくある間違いもご紹介しますので、自分で作成したい方はぜひ参考にしてください。

遺産分割協議書とは?基本を押さえよう

まずは、遺産分割協議書の基本的なしくみを確認しましょう。

遺産分割協議書はどんな書類?

遺産分割協議書とは、亡くなった方(被相続人)の財産について、相続人全員が話し合い、「誰が何を相続するか」を決めた内容を書面にまとめたものです。

この書類は、以下のような相続手続きで必要になります。

  • 不動産の名義変更(相続登記)
  • 銀行口座の解約や名義変更
  • 自動車の名義変更
  • 相続税の申告

ポイント
2024年4月から相続登記が義務化されました(参考: 法務省「相続登記の義務化」)。不動産を相続した場合は、原則として相続を知った日から3年以内に登記申請が必要です。

遺産分割協議書が必要なケース・不要なケース

すべての相続で遺産分割協議書が必要なわけではありません。

ケース 遺産分割協議書
遺言書がなく、相続人が複数いる 必要
遺言書はあるが、内容に不備がある 必要
遺言書に書かれていない財産がある 必要
有効な遺言書があり、その内容どおりに分ける 不要
相続人が1人だけ 不要
相続人全員が相続放棄した 不要

書式に決まりはある?

遺産分割協議書には、法律で定められた書式はありません。縦書きでも横書きでも、手書きでもパソコンでも作成できます。

ただし、以下の点は必ず守る必要があります。

  • 相続人全員の署名・実印での押印
  • 印鑑登録証明書の添付
  • 複数ページの場合は契印(割印)
  • 財産の正確な特定

遺産分割協議書を作る前に準備すること

遺産分割協議書を作成する前に、いくつかの準備が必要です。この準備を怠ると、あとでやり直しになるおそれがあります。

準備1. 遺言書の有無を確認する

まず、亡くなった方が遺言書を残していないか確認しましょう。

遺言書の確認先は以下のとおりです。

  • 自筆証書遺言: 自宅の金庫やタンス、法務局の保管制度
  • 公正証書遺言: 公証役場で検索可能(全国どこからでも)

自筆証書遺言が自宅などで見つかった場合は、勝手に開封せず、家庭裁判所で「検認」の手続きを受ける必要があります。ただし、法務局の保管制度を利用していた場合は検認は不要です。

注意
遺言書がある場合でも、相続人全員の合意があれば、遺言と異なる分け方で遺産分割協議を行うことができます。

準備2. 相続人を確定する

遺産分割協議は、相続人全員が参加しなければ無効になります。「知らなかった相続人がいた」ということがないよう、戸籍で正確に確認しましょう。

必要な戸籍は以下のとおりです。

書類 目的 取得先
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本 相続人の範囲を確定 本籍地の市区町村役場
被相続人の住民票の除票 最後の住所を確認 市区町村役場
相続人全員の現在の戸籍謄本 相続人の生存確認 本籍地の市区町村役場

ポイント
被相続人の戸籍は「出生から死亡まで」をつなげて集める必要があります。本籍を移している場合は、複数の市区町村から取り寄せることになります。

準備3. 相続財産を洗い出す

すべての財産を漏れなくリストアップしましょう。プラスの財産だけでなく、マイナスの財産(借金・ローンなど)も対象です。

主な相続財産の例

プラスの財産 マイナスの財産
預貯金(普通預金・定期預金) 住宅ローン
不動産(土地・建物・マンション) カードローン
有価証券(株式・投資信託) 未払いの税金
自動車 未払いの医療費
生命保険金(※みなし相続財産) 保証債務
ゴルフ会員権

財産を確定したら「財産目録」を作成しておくと、遺産分割協議がスムーズに進みます。

準備4. 必要書類を集める

遺産分割協議書の作成と、そのあとの手続きに必要な書類を事前に集めておきましょう。

書類 取得先 費用の目安
被相続人の出生〜死亡までの戸籍謄本 本籍地の市区町村役場 1通450〜750円
被相続人の住民票の除票 市区町村役場 1通200〜400円
相続人全員の印鑑登録証明書 市区町村役場 1通200〜400円
不動産の登記事項証明書 法務局 1通600円
固定資産評価証明書 市区町村役場 1通200〜400円

ポイント
印鑑登録をしていない相続人がいる場合は、先に市区町村役場で印鑑登録の手続きを済ませておきましょう。

「準備だけでも大変そう…」と感じた方は、相続の専門家に相談するのも一つの方法です。書類集めから遺産分割協議書の作成まで、まとめてサポートしてもらえます。

遺産分割協議書の書き方【5ステップ】

準備が整ったら、いよいよ遺産分割協議書を作成します。5つのステップで順番に進めましょう。

ステップ1. タイトルと被相続人の情報を書く

まず、書類の冒頭に「遺産分割協議書」というタイトルを記載します。

次に、亡くなった方(被相続人)の基本情報を書きます。

記載例

遺産分割協議書

被相続人 山田太郎(令和○年○月○日死亡)の遺産について、
共同相続人全員で協議を行った結果、次のとおり分割することに合意した。

被相続人の表示
  氏 名: 山田太郎
  生年月日: 昭和○年○月○日
  死亡日: 令和○年○月○日
  本籍地: 東京都○○区○○町○丁目○番地
  最後の住所: 東京都○○区○○町○丁目○番○号

ステップ2. 各財産と取得者を記載する

誰がどの財産を取得するかを、具体的に記載します。

財産の種類ごとに、正しい書き方が異なります。詳しい文例は次のセクションでご紹介します。

基本的な記載パターン

1. 相続人 山田花子 は、次の財産を取得する。
  (財産の詳細を記載)

2. 相続人 山田一郎 は、次の財産を取得する。
  (財産の詳細を記載)

ステップ3. 後日判明した財産への対応を記載する

あとから新しい財産が見つかる場合に備えて、対応方法を記載しておきます。

記載例

本協議書に記載のない遺産および後日判明した遺産については、
相続人 山田花子 が取得する。

もしくは、以下のように改めて協議するとしてもかまいません。

本協議書に記載のない遺産および後日判明した遺産については、
別途相続人全員で協議のうえ決定する。

ステップ4. 日付を記載する

相続人全員の署名・押印が完了した日付を記載します。

以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したことを証するため、
本協議書を○通作成し、各自1通ずつ保有する。

令和○年○月○日

ポイント
協議書は相続人の人数分を作成し、全員が1通ずつ原本を保管するのが一般的です。

ステップ5. 相続人全員が署名・押印する

最後に、相続人全員が住所を記入し、自署で氏名を書き、実印を押します。

住所: 東京都○○区○○町○丁目○番○号
相続人: 山田花子(自署)       実印

住所: 神奈川県○○市○○町○丁目○番○号
相続人: 山田一郎(自署)       実印

注意
住所は住民票のとおり正確に記載してください。「○丁目○番地」を「○-○」と省略すると、法務局で受理されないことがあります。

【財産別テンプレート】書き方の文例集

財産の種類によって、遺産分割協議書への書き方が異なります。ここでは、よく使われるパターン別に文例をご紹介します。

不動産(土地)の文例

土地は、登記事項証明書(登記簿謄本)の記載どおりに正確に書きます。

1. 相続人 山田花子 は、次の不動産を取得する。

【土地】
  所 在 東京都○○区○○町○丁目
  地 番 ○○番○○
  地 目 宅地
  地 積 150.25平方メートル

注意
固定資産税の通知書を見て書くと、地番や地積が登記記録と異なる場合があります。必ず登記事項証明書をもとに記載してください。

不動産(建物)の文例

建物も、登記事項証明書の記載に合わせます。

【建物】
  所 在 東京都○○区○○町○丁目○番地○
  家屋番号 ○○番○
  種 類 居宅
  構 造 木造瓦葺2階建
  床面積 1階 65.50平方メートル
          2階 52.30平方メートル

不動産(マンション)の文例

マンションは記載項目が多いため、特に注意が必要です。

【マンション(区分建物)】

一棟の建物の表示
  所 在 東京都○○区○○町○丁目○番地○
  建物の名称 ○○マンション

専有部分の建物の表示
  家屋番号 ○○町○丁目○番○の301
  建物の名称 301
  種 類 居宅
  構 造 鉄筋コンクリート造1階建
  床面積 3階部分 72.50平方メートル

敷地権の表示
  所在及び地番 東京都○○区○○町○丁目○番○
  地 目 宅地
  地 積 2500.00平方メートル
  敷地権の種類 所有権
  敷地権の割合 50000分の725

預貯金の文例

預貯金は、金融機関名・支店名・種類・口座番号で特定します。

2. 相続人 山田一郎 は、次の預貯金を取得する。

  ○○銀行 ○○支店
  普通預金 口座番号 1234567
  口座名義人 山田太郎
  (相続開始日現在の残高およびその後に発生する利息を含む)

ポイント
預貯金は「○○万円」のように金額を指定するよりも、口座ごと取得する書き方がおすすめです。相続開始後も利息などで残高が変動するためです。

自動車の文例

自動車は、車検証の記載をもとに特定します。

3. 相続人 山田一郎 は、次の自動車を取得する。

  車 名 トヨタ ○○
  型 式 DBA-○○○○
  車台番号 ○○○-○○○○○○○
  登録番号 品川 300 あ ○○○○

有価証券の文例

株式や投資信託は、証券会社・銘柄・数量で特定します。

4. 相続人 山田花子 は、次の有価証券を取得する。

  ○○証券 ○○支店
  口座番号 ○○○○○○
  株式会社○○ 普通株式 1,000株

代償分割の文例

特定の相続人が多くの財産を取得し、ほかの相続人に金銭を支払う「代償分割」の場合の文例です。

1. 相続人 山田花子 は、以下の不動産を取得する。
  (不動産の詳細)

2. 相続人 山田花子 は、前項の不動産を取得する代償として、
   相続人 山田一郎 に対し、金500万円を
   令和○年○月○日までに、下記口座へ振り込む方法により支払う。
   振込手数料は山田花子の負担とする。

   ○○銀行 ○○支店
   普通預金 口座番号 ○○○○○○○
   口座名義人 山田一郎

換価分割の文例

財産を売却して代金を分ける「換価分割」の場合の文例です。

1. 相続人全員は、以下の不動産を換価分割するため、
   相続人 山田花子 の名義で相続登記を行ったうえで売却し、
   売却代金から仲介手数料・登記費用・譲渡所得税等の
   一切の費用を控除した残額を、
   山田花子 および 山田一郎 がそれぞれ2分の1の割合で取得する。

  (不動産の詳細)

注意
換価分割の場合は、遺産分割協議書に必ず「換価分割のために名義を移す」旨を明記してください。この記載がないと、売却代金を分配したときに贈与とみなされ、贈与税がかかるおそれがあります。

遺産分割協議書で失敗しやすいポイント6つ

遺産分割協議書の作成では、いくつかの間違いが起きやすいです。無効にならないよう、以下の6つのポイントに注意しましょう。

間違い1. 相続人が全員参加していない

遺産分割協議は、相続人全員が参加しなければ無効です。1人でも欠けていたら、最初からやり直しになります。

特に注意が必要なのは、以下のケースです。

  • 前妻との間の子ども
  • 認知された婚外子
  • 養子縁組された方

戸籍謄本で相続人の範囲をしっかり確認しましょう。

間違い2. 財産の記載があいまい

「銀行の預金を長男が取得する」のような書き方では、どの口座か特定できません。

不動産は登記事項証明書、預貯金は金融機関名・支店名・口座番号を必ず記載してください。

間違い3. 実印で押印していない

法律上は実印でなくてもよいのですが、金融機関や法務局での手続きでは実印を求められるのが一般的です。

認印で押してしまうと、手続きの段階でやり直しを求められます。最初から実印を使いましょう。

間違い4. 預貯金の金額を細かく指定している

「○○銀行の普通預金300万円を取得する」のように金額を指定すると、相続開始後に利息や引き落としで残高が変わった場合に問題が生じます。

金額ではなく「口座の全額」または「2分の1」のような割合で記載するのがおすすめです。

間違い5. 新しい財産が見つかったときの対応がない

遺産分割協議の時点では把握していなかった財産が、あとから見つかるケースは少なくありません。

このときの対応を書いていないと、改めて遺産分割協議をやり直す必要が出てきます。「後日判明した財産は○○が取得する」または「別途協議する」と記載しておきましょう。

間違い6. 住所を省略して書いている

「東京都○○区○○1-2-3」のように住所を省略すると、法務局で登記が受理されないことがあります。

住民票のとおり「○○町○丁目○番○号」と正式に記載しましょう。

自分で作成するのが不安なときは?専門家への依頼費用

「自分で作れるか不安」「相続する財産が多くて複雑」という方は、専門家に依頼する方法もあります。

専門家別の費用相場

依頼先 費用の目安 こんな場合におすすめ
行政書士 3万〜8万円 不動産がない・紛争がない
司法書士 4万〜12万円 不動産の相続登記もあわせて依頼したい
弁護士 10万円〜 相続人間で争いやトラブルがある
税理士 遺産総額の0.5〜1.0% 相続税の申告が必要

※ 行政書士の費用は日本行政書士会連合会の報酬アンケート(2020年実施)、司法書士の費用は日本司法書士会連合会の報酬アンケート(2018年実施)を参考にしています。

どの専門家を選べばいい?

以下を目安に選びましょう。

  • シンプルな相続(預貯金のみ・相続人が少ない)→ 行政書士
  • 不動産がある相続司法書士(登記もまとめて依頼できる)
  • 相続人間でもめている弁護士(代理人として交渉可能)
  • 相続税の申告が必要税理士(節税のアドバイスも受けられる)

相続する財産の内容や相続人の関係性に応じて、最適な専門家は変わります。まずは無料相談を活用して、ご自身のケースに合った専門家を見つけることをおすすめします。なお、相続税の申告が必要かどうかの判断については「相続税はいくらからかかる?基礎控除と計算方法」で詳しく解説しています。

相続の手続き全体の流れについて詳しく知りたい方は、「相続手続きを自分でやる方法」の記事もあわせてご覧ください。

よくある質問

Q. 遺産分割協議書はいつまでに作成する必要がありますか?

法律上の期限はありません。ただし、相続税の申告が必要な場合は、相続が発生してから10か月以内に申告を済ませる必要があります。また、2024年4月からは相続登記の義務化により、不動産を相続した場合は3年以内の登記が必要です。なるべく早めに作成するのがおすすめです。

Q. 遺産分割協議書は手書きでもいいですか?

はい、手書きでも問題ありません。ただし、パソコンで作成するほうが修正しやすく、読みやすいためおすすめです。なお、相続人の氏名(署名)は自署(手書き)にしましょう。

Q. 遺産分割協議書に収入印紙は必要ですか?

原則として不要です。ただし、不動産の相続登記を申請する際に、登記事項証明書の取得費用(1通600円)や登録免許税(固定資産評価額の0.4%)が別途かかります。

Q. 相続人が遠方に住んでいる場合はどうすればいい?

全員が一か所に集まる必要はありません。郵送で遺産分割協議書を回し、順番に署名・押印してもらう方法が一般的です。この場合、全員分の印鑑登録証明書も一緒に集める必要があります。

Q. 相続人に未成年者がいる場合はどうすればいい?

未成年者(18歳未満の方)は遺産分割協議に直接参加できません。家庭裁判所に「特別代理人」の選任を申し立て、選ばれた特別代理人が未成年者に代わって協議に参加します。親権者が同じ相続の当事者である場合、親権者は代理人になれないため注意が必要です。

まとめ

この記事では、遺産分割協議書の書き方を5ステップで解説しました。

最後に、大切なポイントをおさらいします。

  • 遺産分割協議書に決まった書式はないが、相続人全員の署名・実印が必要
  • 作成前に「相続人の確定」と「財産の洗い出し」を済ませておく
  • 財産は登記事項証明書や口座情報をもとに正確に記載する
  • 後日判明した財産への対応も忘れずに書く
  • 住所の省略や認印の使用はトラブルのもと

遺産分割協議書は、ご家族の大切な財産を適切に引き継ぐための重要な書類です。この記事のテンプレートを活用して、一つひとつ確認しながら作成してみてください。

ただし、相続する財産が複雑な場合や、相続人間で意見が分かれている場合は、無理をせず専門家に相談することをおすすめします。

※ この記事は一般的な情報提供を目的としています。
個別の事情については、専門家(弁護士・税理士・司法書士・行政書士など)や裁判所(遺産分割調停)にご相談ください。

参考情報・出典