【この記事の結論】 実家の生前名義変更は贈与契約書の作成から登記申請まで4ステップで、税金は3種類かかります。

  • 手続きは4ステップ — 贈与契約書の作成→必要書類の収集→法務局へ登記申請→翌年に贈与税申告
  • 税金は3種類 — 贈与税・登録免許税(評価額の2%)・不動産取得税(評価額の3%)
  • 相続時精算課税制度で節税 — 2,500万円まで贈与税が非課税。2024年改正で年110万円の基礎控除も新設

この記事の対象読者: 親の実家を生前に名義変更したい方、贈与税と相続税どちらが得か知りたい方

読んだら今日やること: 実家の固定資産税評価額を確認し、贈与税と相続税のどちらが有利か試算しましょう

「親が元気なうちに実家の名義を変えておきたい」——そう考える方は増えています。

認知症になると不動産の売却や管理ができなくなるリスクがあるため、生前の名義変更は有効な対策のひとつです。

しかし、名義変更には贈与税・登録免許税・不動産取得税など複数の税金がかかります。制度を知らずに進めると、数十万〜数百万円の税負担が発生することも。

この記事では、実家を生前に名義変更する手続きの流れから、かかる税金の計算方法、節税対策まで、具体的な金額例つきでわかりやすく解説します。


実家の名義変更が必要な3つのケース

まず、実家の名義変更が必要になる場面を確認しましょう。

ケース 名義変更の方法 特徴
生前贈与 親が存命中に子へ無償で譲渡 親の意思で確実に渡せる
相続 親の死亡後に相続人へ移転 税負担が比較的軽い
売買 親子間で売買契約を結ぶ 適正価格でないとみなし贈与になる

この記事では主に生前贈与による名義変更を解説します。


生前贈与で名義変更する手続きの流れ【4ステップ】

生前贈与による実家の名義変更は、次の4ステップで進めます。

ステップ1:贈与契約書を作成する

贈与は口約束でも成立しますが、必ず書面で贈与契約書を作成しましょう。後日のトラブル防止と、税務調査への対応に必要です。

贈与契約書に記載すべき項目:

  • 贈与者(親)の氏名・住所
  • 受贈者(子)の氏名・住所
  • 贈与する不動産の表示(所在地・地番・家屋番号など)
  • 贈与の日付
  • 双方の署名・押印(実印が望ましい)

ステップ2:必要書類を収集する

法務局への登記申請に必要な書類は次のとおりです。

書類 取得先 備考
登記識別情報(権利証) 親が保管 紛失時は司法書士に相談
贈与者(親)の印鑑証明書 市区町村役場 発行から3ヶ月以内
受贈者(子)の住民票 市区町村役場 新しい所有者の住所確認
固定資産評価証明書 市区町村役場 登録免許税の計算に必要
贈与契約書 自分で作成 ステップ1で作成したもの
登記申請書 法務局のHPからダウンロード 自分で作成または司法書士に依頼

ステップ3:法務局へ登記申請する

必要書類がそろったら、不動産の所在地を管轄する法務局に所有権移転登記を申請します。

  • 申請方法: 窓口持参・郵送・オンラインの3通り
  • 登録免許税: 申請時に納付(固定資産評価額×2%)
  • 処理期間: 通常1〜2週間

自分で申請することもできますが、書類の不備があると補正が必要になります。不安な方は司法書士への依頼がおすすめです。費用の目安は3万〜8万円程度です。

ステップ4:翌年に贈与税を申告する

贈与を受けた翌年の2月1日〜3月15日に、受贈者(子)が贈与税の確定申告を行います。

  • 申告先: 受贈者の住所地の税務署
  • 基礎控除: 年110万円(暦年課税の場合)
  • 相続時精算課税を選択した場合: 初回に届出書の提出が必要

年110万円以下の贈与で暦年課税の場合は、申告不要です。


名義変更にかかる3つの税金

生前贈与で実家の名義変更をする場合、次の3つの税金がかかります。

1. 贈与税

贈与を受けた財産の価額に応じて課税されます。

暦年課税の税率表(一般贈与):

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% —
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

特例贈与(親→18歳以上の子)の場合は税率が軽減されます。

2. 登録免許税

法務局への登記申請時に納付する税金です。

名義変更の原因 税率
生前贈与 固定資産評価額 × 2%
相続 固定資産評価額 × 0.4%
売買 固定資産評価額 × 2%(軽減あり)

生前贈与の登録免許税は、相続の場合の5倍です。これは生前贈与のデメリットのひとつです。

3. 不動産取得税

不動産を取得した人に対して、都道府県が課税する税金です。

不動産の種類 税率
住宅用の土地・建物 固定資産評価額 × 3%
住宅以外の建物 固定資産評価額 × 4%

相続による取得の場合は不動産取得税がかかりません。 これも生前贈与と相続の大きな違いです。


具体例で税金をシミュレーション

固定資産評価額1,500万円の実家を、親から子へ生前贈与する場合の税金を計算してみましょう。

ケース1:暦年課税(特例贈与)の場合

税金 計算 金額
贈与税 (1,500万 − 110万)× 40% − 190万 366万円
登録免許税 1,500万 × 2% 30万円
不動産取得税 1,500万 × 3% 45万円
合計 約441万円

暦年課税では非常に高額な税負担になります。贈与税の税率表は国税庁のホームページで最新情報をご確認ください。

ケース2:相続時精算課税を選択した場合

税金 計算 金額
贈与税 1,500万 − 110万(基礎控除) − 1,390万(特別控除内) 0円
登録免許税 1,500万 × 2% 30万円
不動産取得税 1,500万 × 3% 45万円
合計 約75万円

相続時精算課税を選べば、贈与税は0円。ただし登録免許税と不動産取得税の合計75万円はかかります。

参考:相続の場合

税金 計算 金額
相続税 基礎控除内なら 0円
登録免許税 1,500万 × 0.4% 6万円
不動産取得税 相続は非課税 0円
合計 約6万円

税金だけを比べると相続の方が圧倒的に安いです。ただし、生前贈与には税金以外のメリットがあります。


節税に使える3つの制度

生前贈与の税負担を軽くするための制度を紹介します。

1. 相続時精算課税制度

60歳以上の親から18歳以上の子への贈与に使える制度です。

項目 内容
特別控除 累計2,500万円まで贈与税ゼロ
基礎控除 年110万円(2024年改正で新設)
超過分の税率 一律20%
相続時 贈与額を相続財産に加算して精算

2024年改正のポイント:

  • 年110万円までの贈与は申告不要
  • 年110万円までの贈与は相続財産に加算不要
  • 一度選択すると暦年課税に戻れない点は変わらず

2. 暦年贈与(持分移転)

不動産を一度に贈与するのではなく、毎年少しずつ持分を移転する方法です。

たとえば、評価額1,500万円の実家を10年かけて1/10ずつ贈与すれば、毎年の贈与額は150万円。基礎控除110万円を引くと課税対象は40万円(贈与税4万円)で済みます。

ただし、毎回登記が必要で司法書士費用がかさむ点と、定期贈与とみなされるリスクがある点に注意が必要です。

3. おしどり贈与(配偶者控除)

婚姻期間20年以上の夫婦間で、居住用不動産を贈与する場合に使える特例です。

  • 控除額: 最大2,000万円+基礎控除110万円=合計2,110万円
  • 条件: 贈与の翌年3月15日までに居住し、その後も住み続ける見込み

親子間では使えませんが、配偶者に実家の名義を移す場合に有効です。


生前贈与と相続、どちらがお得?判断基準

「結局、生前贈与と相続のどちらがいいの?」——この判断は、個々の状況によって異なります。

生前贈与が向いているケース

  • 認知症のリスクに備えたい: 判断能力が低下すると不動産の売却・管理が困難に
  • 相続トラブルを防ぎたい: 「この家は○○に渡す」と確実に実行できる
  • 将来の値上がりが予想される: 贈与時の評価額で税額が確定する
  • 相続税の基礎控除を超えそう: 生前に財産を減らすことで節税

相続を待つ方が有利なケース

  • 税負担を最小限にしたい: 登録免許税5倍・不動産取得税の差が大きい
  • 小規模宅地等の特例が使える: 最大80%の評価減(生前贈与では使えない)
  • 相続税の基礎控除内に収まる: 相続税ゼロ+登録免許税0.4%で最安
  • 親が住み続ける予定: 名義を変えなくても問題ない

判断のポイント

比較項目 生前贈与 相続
贈与税/相続税 高い(最大55%) 低い(基礎控除あり)
登録免許税 2% 0.4%
不動産取得税 3% 非課税
小規模宅地等の特例 使えない 最大80%減額
確実性 高い(親の意思で決定) 遺言がないと不安定
認知症対策 有効 対策にならない

必要書類チェックリスト

相続が発生した場合の手続き全般は「葬儀後の手続きチェックリスト」で時系列にまとめています。

名義変更に必要な書類を一覧にまとめました。

チェック 書類名 取得先 費用の目安
□ 贈与契約書 自分で作成 0円
□ 登記識別情報(権利証) 親が保管 —
□ 贈与者の印鑑証明書 市区町村役場 300円
□ 受贈者の住民票 市区町村役場 300円
□ 固定資産評価証明書 市区町村役場 300〜400円
□ 登記申請書 法務局HPからDL 0円
□ 本人確認書類(運転免許証等) — —

司法書士に依頼する場合は、委任状も必要です。


実家の生前名義変更に関するQ&A

Q. 名義変更は自分でもできますか?

はい、自分でも可能です。 法務局のホームページに登記申請書のひな形があり、窓口で相談もできます。ただし、書類に不備があると補正が必要になるため、不慣れな方は司法書士に依頼するのが確実です。費用は3万〜8万円程度です。

Q. 親が認知症になったら名義変更はできませんか?

原則としてできません。 贈与契約には本人の意思能力が必要です。認知症で判断能力が低下した場合、贈与契約そのものが無効になる可能性があります。そのため、親が元気なうちに対策をとることが重要です。成年後見制度を利用する方法もありますが、手続きが複雑で費用もかかります。

Q. 相続時精算課税制度を使うと相続税は増えますか?

贈与額が相続財産に加算されるため、相続税が増える可能性があります。 ただし、2024年の改正で年110万円以下の贈与分は加算されなくなりました。また、贈与時に支払った贈与税がある場合は相続税から控除されます。相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えない場合は、影響はありません。

Q. 親子間の売買で名義変更するとどうなりますか?

適正価格で売買すれば贈与税はかかりません。 ただし、相場より著しく低い価格で売買すると、差額が「みなし贈与」として贈与税の対象になります。適正価格は路線価や固定資産評価額を参考にしますが、判断が難しいため税理士に相談するのがおすすめです。


まとめ

実家を生前に名義変更する際のポイントを整理します。

ポイント 内容
手続き 贈与契約書作成→書類収集→法務局で登記→翌年に申告
かかる税金 贈与税+登録免許税(2%)+不動産取得税(3%)
節税制度 相続時精算課税(2,500万円+年110万円控除)
判断基準 認知症対策・トラブル防止なら生前贈与、税負担最小なら相続

生前贈与は税負担が大きくなりがちですが、認知症リスクへの備えや確実な財産承継というメリットがあります。

どちらが最適かは財産の規模や家族構成によって異なるため、税理士や司法書士に相談してから判断することをおすすめします。


相続の手続き全般については「相続手続きを自分でやる方法」、相続税の基礎控除については「相続税はいくらから?基礎控除を解説」もあわせてご覧ください。

この記事は一般的な情報提供を目的としています。税金の計算や具体的な手続きについては、税理士・司法書士等の専門家にご相談ください。税制は改正されることがあるため、最新の情報は国税庁のホームページでご確認ください。

最終更新日: 2026年2月27日

参考情報・出典