【この記事の結論】 未支給年金は死亡月までの年金を遺族が請求でき、請求期限は5年以内。別居でも生計同一証明書があれば受給可能です。

  • 請求できる遺族 — 配偶者・子・父母など三親等内の親族で、生計を同じくしていた方
  • 必要書類7点 — 年金証書・戸籍謄本・住民票・口座情報など。別居なら申立書も必要
  • 税金の扱い — 相続税は非課税。一時所得として所得税の対象(特別控除50万円あり)

この記事の対象読者: 親や配偶者が亡くなり年金手続きが必要な方/別居していた親の未支給年金を請求したい方
読んだら今日やること: 亡くなった方の年金証書と戸籍謄本を手元に用意して、最寄りの年金事務所に電話で相談しましょう

未支給年金とは?制度の基本をわかりやすく解説

未支給年金とは、年金を受け取っていた方が亡くなったとき、まだ支給されていない年金のことです。

年金は偶数月(2月・4月・6月・8月・10月・12月)に前月と前々月の2か月分がまとめて振り込まれます。そのため、亡くなった月までの年金が未支給の状態で残るケースがほとんどです。

たとえば、4月15日に亡くなった場合を見てみましょう。

支給月 対象月 状態
4月(4月15日振込) 2月分・3月分 振込済み
6月(次回振込) 4月分 未支給(死亡月分)

この4月分の年金が「未支給年金」となり、生計を同じくしていた遺族が請求できます。

未支給年金の法的根拠

未支給年金は国民年金法第19条(厚生年金は第37条)で定められた制度です。亡くなった方の権利ではなく、遺族が自分の名前で請求する固有の権利とされています。

そのため、遺産分割の対象にはならず、相続放棄をした方でも請求できる点が特徴です。

未支給年金を請求できる遺族の範囲と優先順位

未支給年金を請求できるのは、亡くなった方と生計を同じくしていた遺族に限られます。

請求できる遺族には以下の優先順位があります。

順位 続柄
第1順位 配偶者
第2順位
第3順位 父母
第4順位
第5順位 祖父母
第6順位 兄弟姉妹
第7順位 上記以外の三親等内の親族

第7順位の「三親等内の親族」は、2014年(平成26年)4月から追加されました。おい・めいなども請求できるようになっています。

注意点として、同順位の方が複数いる場合は、全員の連名で請求する必要があります。たとえば、お子さんが3人いる場合は代表者1名が請求し、他の2名の委任状が必要です。

未支給年金の請求手続き5ステップ

未支給年金の請求は、以下の5つのステップで進めます。

ステップ1:年金事務所へ死亡の届出をする

亡くなったことがわかったら、速やかに年金事務所へ届出を行います。届出が遅れると年金が振り込まれ続け、後日過払い分の返還を求められることがあります。

届出先は以下のとおりです。

  • 国民年金のみ:市区町村役場の年金窓口
  • 厚生年金:最寄りの年金事務所

届出には「年金受給権者死亡届(報告書)」を提出します。市区町村への死亡届の書き方と提出方法も合わせて確認しておきましょう。日本年金機構にマイナンバーが登録されている場合は、届出が省略できることもあります。

ステップ2:必要書類を準備する

未支給年金の請求に必要な書類を集めます(詳しくは次のセクションで解説)。戸籍謄本や住民票は、市区町村役場で取得できます。

ステップ3:請求書を記入する

年金受給権者死亡届(報告書)兼 未支給年金・未支払給付金請求書」に必要事項を記入します。この書類は年金事務所の窓口でもらえるほか、日本年金機構のWebサイトからダウンロードも可能です。

ステップ4:年金事務所に提出する

記入した請求書と必要書類をまとめて、最寄りの年金事務所に提出します。郵送での提出も可能ですが、書類の不備があると差し戻されるため、窓口での提出がおすすめです。

ステップ5:振込を待つ

提出から約3〜4か月で「未支給決定通知書」が届きます。その後、決定通知書の送付から約2か月で指定口座に振り込まれます。

全体の目安は請求から約5〜6か月です。

未支給年金の必要書類一覧【チェックリスト】

未支給年金を請求するときに必要な書類を一覧にまとめました。

# 必要書類 取得先 備考
1 年金受給権者死亡届 兼 未支給年金請求書 年金事務所・日本年金機構HP 1枚の用紙に兼用
2 亡くなった方の年金証書 手元にあるもの 紛失時は申出書を添付
3 戸籍謄本または法定相続情報一覧図 市区町村役場 受給権者との続柄確認用
4 世帯全員の住民票の写し 市区町村役場 受給権者の死亡日以降に取得
5 受給権者の住民票除票 市区町村役場 死亡の事実を証明
6 請求者名義の金融機関口座 通帳またはキャッシュカードのコピー
7 生計同一関係に関する申立書 年金事務所・日本年金機構HP 別居の場合のみ必要

同居で住民票が同一世帯の場合は、7番目の申立書は原則不要です。

生計同一証明書の書き方【同居・別居別に解説】

別居していた場合に最も重要な書類が「生計同一関係に関する申立書」です。書き方を同居・別居のケース別に解説します。

同居していた場合

同居で住民票が同一世帯であれば、申立書は原則不要です。住民票の写しで生計同一が確認できるためです。

ただし、同じ住所でも世帯が別になっている場合は、申立書が必要になることがあります。

別居していた場合

別居の場合は、以下の2つの要件を証明する必要があります。

要件 具体例
経済的援助があったこと 仕送り・生活費の負担・医療費の支援・家賃の支払い
定期的な音信・訪問があったこと 電話・メール・手紙のやり取り・月1回以上の訪問

第三者証明が必要なケース

別居の場合は、第三者による証明が必要です。第三者とは、請求者の三親等内の親族以外の方を指します。

第三者として証明できる方の例は以下のとおりです。

  • 民生委員
  • 町内会長・自治会長
  • 医師・看護師
  • 介護施設の職員
  • 勤務先の事業主

第三者は、申立書の「第三者による証明」欄に、氏名・住所・電話番号・続柄(関係)を記入し、署名します。

第三者証明を省略できるケース

以下の書類を添付できれば、第三者証明は省略可能です。

  • 健康保険の被扶養者証の写し
  • 給与簿または源泉徴収票のコピー
  • 預金通帳の振込記録(仕送りの証拠)
  • 生命保険の保険証券(受取人が確認できるもの)

これらの書類で経済的援助の事実を客観的に証明できれば、第三者に依頼する手間が省けます。

未支給年金の請求期限と時効

未支給年金の請求には時効があります。

請求期限は、年金の支払日の翌月初日から5年以内です。

たとえば、6月に支払われるはずだった年金(4月分・5月分)であれば、6月の翌月である7月1日から数えて5年以内に請求する必要があります。

5年を過ぎると時効が成立し、未支給年金を受け取れなくなります。亡くなった後のさまざまな手続きに追われて忘れがちですので、早めの請求を心がけましょう

未支給年金の税金|相続税は非課税・一時所得として申告

未支給年金の税金の扱いは、多くの方が誤解しやすいポイントです。

相続税は非課税

未支給年金は相続税の課税対象にはなりません

最高裁判決により、未支給年金の請求権は相続によって取得するものではなく、遺族固有の権利とされています。そのため、相続財産には含まれず、遺産分割の対象にもなりません。

一時所得として所得税がかかる

一方で、受け取った未支給年金は一時所得として所得税・住民税の課税対象になります。

一時所得の計算方法は以下のとおりです。

計算項目 内容
総収入金額 未支給年金の受取額
経費 0円(年金のため経費なし)
特別控除額 50万円
課税される一時所得 (受取額 − 50万円)× 1/2

受け取った未支給年金が50万円以下であれば、特別控除の範囲内で税金はかかりません。50万円を超える場合は、確定申告が必要です。

未支給年金でよくある失敗と注意点

未支給年金の手続きで起こりやすいトラブルを4つ紹介します。

失敗1:死亡届の届出が遅れて過払いが発生

年金事務所への死亡届が遅れると、亡くなった後も年金が振り込まれることがあります。この場合、過払い分は返還しなければなりません

口座が凍結される前に振り込まれた年金を使ってしまうと、返還に苦労するケースもあります。早めの届出が大切です。

失敗2:生計同一の証明が不十分で却下される

別居の場合、経済的援助と音信・訪問の両方を証明する必要があります。「たまに電話していた」だけでは不十分と判断されることがあります。

仕送りの振込記録や訪問の記録(写真・交通費の領収書など)を準備しておきましょう。

失敗3:5年の時効を知らず請求を忘れる

他の相続手続きに追われ、未支給年金の請求を後回しにしてしまうケースがあります。特に、故人が複数の年金を受給していた場合は、一部の年金の請求を忘れがちです。

死亡後の手続きリストに「未支給年金の請求」を必ず入れておきましょう。

失敗4:相続財産と勘違いして遺産分割の対象にする

未支給年金は遺族固有の権利であり、遺産分割の対象ではありません。相続人全員で分ける必要はなく、優先順位の最も高い方が受け取ります。

ただし、未支給年金の存在を知らない相続人との間でトラブルになることもあるため、事前に家族で情報を共有しておくことが重要です。

未支給年金のよくある質問(FAQ)

Q1. 相続放棄をしても未支給年金は受け取れますか?

はい、受け取れます。 未支給年金は相続財産ではなく、遺族固有の権利です。相続放棄をしても、生計同一の要件を満たしていれば請求できます。

Q2. 生計同一でなくても請求できる方法はありますか?

原則として、生計同一でなければ請求できません。 ただし、生計同一の判断は「経済的援助」と「定期的な音信・訪問」で総合的に行われるため、完全な別居でも仕送りや定期的な訪問があれば認められる場合があります。

Q3. 未支給年金はいくらくらいもらえますか?

1〜2か月分の年金額が目安です。 亡くなった月によって変わりますが、最大で2か月分の年金が未支給となります。老齢厚生年金を受給していた方であれば、月額10万〜15万円程度が一般的です。年金額の目安については「老後の年金はいくらもらえる?」で詳しく解説しています。

Q4. 年金証書を紛失した場合はどうすればいいですか?

年金証書がなくても請求可能です。 紛失した旨を年金事務所に申し出れば、基礎年金番号や氏名で本人確認ができます。「年金証書亡失届」を一緒に提出してください。


※ 免責事項

この記事は2026年2月時点の法令・制度情報に基づいて作成しています。年金制度は法改正により変更される場合があります。個別のケースについては、最寄りの年金事務所または社会保険労務士にご相談ください。