「認知症になったら、お金の管理はどうなるのだろう」「自分で後見人を選べる制度があると聞いたけれど、どう進めればいいのか」と気になっていませんか。
この記事では、任意後見制度の仕組み・費用・手続きの流れを5ステップでわかりやすく解説します。
【この記事の結論】 任意後見制度は、判断能力があるうちに自分で後見人を選べる制度で、公正証書の作成費用は約2万円、専門家への依頼を含めると約7万〜17万円が目安です。
- 任意後見とは — 認知症に備え、元気なうちに信頼できる人を後見人に指定する契約制度
- 費用の目安 — 公証役場の費用約2万円+専門家報酬5万〜15万円+監督人報酬月1万〜3万円
- 手続きは5ステップ — 後見人選び→契約内容決定→公正証書作成→登記→監督人選任申立
この記事の対象読者: 認知症に備えて財産管理の準備をしたい方、任意後見と法定後見の違いを知りたい方、おひとりさまで後見制度の利用を検討中の方 読んだら今日やること: 任意後見人の候補者(家族・専門家)をリストアップし、お住まいの地域の公証役場に相談予約をしてみましょう
任意後見制度とは?
任意後見制度とは、判断能力が十分あるうちに、将来の認知症等に備えて、自分で選んだ人(任意後見人)に財産管理や契約手続きを代行してもらう契約を結ぶ制度です。
任意後見制度のポイント
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 目的 | 判断能力が低下したときの財産管理・身上監護 |
| 契約のタイミング | 判断能力が十分あるうち(元気なとき) |
| 後見人の選び方 | 本人が自由に選べる(家族・専門家・NPO等) |
| 契約方法 | 公証役場で公正証書を作成(法律で義務づけ) |
| 効力の発生 | 家庭裁判所が任意後見監督人を選任したとき |
任意後見制度は「自分のことは自分で決める」という自己決定権を尊重した制度です。誰に、何を任せるかを、自分の意思で決められる点が最大のメリットです。
任意後見と法定後見の違い
任意後見制度は「事前の備え」、法定後見制度は「事後の対応」という点が根本的な違いで、自分で後見人を選べるのは任意後見だけです。
| 比較項目 | 任意後見制度 | 法定後見制度 |
|---|---|---|
| いつ契約するか | 判断能力があるうち | 判断能力が低下してから |
| 後見人を選ぶ人 | 本人 | 家庭裁判所 |
| 代理権の範囲 | 契約で自由に決められる | 家裁が決定 |
| 取消権 | なし | あり |
| 監督体制 | 任意後見監督人 | 家裁の直接監督 |
| 開始の手続き | 監督人選任の申立て | 後見開始の審判申立て |
ポイント 法定後見では、家庭裁判所が後見人を選ぶため、希望しない人が後見人になる可能性があります。自分の信頼する人に任せたい場合は、元気なうちに任意後見契約を結んでおきましょう。
成年後見制度とは?手続きと費用で、法定後見も含めた全体像を解説しています。
任意後見制度の費用
任意後見制度にかかる費用は、契約時の一時費用と運用中の継続費用の2つに分かれ、契約時は約7万〜17万円(専門家依頼の場合)、運用中は月額3万〜8万円が目安です。
契約時の費用
| 項目 | 費用 | 備考 |
|---|---|---|
| 公証人手数料 | 13,000円 | 1契約につき |
| 法務局への登記嘱託手数料 | 1,600円 | 公証人が代行 |
| 収入印紙代 | 2,600円 | 登記用 |
| 正本・謄本の作成費用 | 約1,000〜3,000円 | 枚数による |
| 公証役場の小計 | 約2万円 | |
| 専門家への依頼報酬 | 約5万〜15万円 | 弁護士・司法書士等 |
| 合計 | 約7万〜17万円 |
運用中の費用(月額)
| 項目 | 月額費用 | 備考 |
|---|---|---|
| 任意後見人の報酬(専門家) | 月額2万〜5万円 | 契約で決定 |
| 任意後見人の報酬(親族) | 無報酬〜月額1万円 | 本人との合意 |
| 任意後見監督人の報酬 | 月額1万〜3万円 | 家裁が決定 |
| 月額合計 | 約3万〜8万円 | 専門家の場合 |
注意 任意後見監督人の報酬は家庭裁判所が決定するため、本人や後見人が金額を交渉することはできません。管理する財産の額が大きいほど、報酬も高くなる傾向があります。
手続きの流れ(5ステップ)
任意後見制度の手続きは「後見人選び → 契約内容の決定 → 公正証書の作成 → 登記 → 監督人選任の申立て」の5ステップで進みます。
ステップ1: 任意後見人の候補者を選ぶ
任意後見人になれる人に特別な資格は必要ありません。以下の中から信頼できる人を選びましょう。
| 候補者 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 家族・親族 | 信頼関係がある。報酬が不要な場合も | 先に亡くなるリスク。負担が大きい |
| 弁護士 | 法律の専門知識がある | 報酬が比較的高い |
| 司法書士 | 登記手続きにも対応 | 報酬がかかる |
| 行政書士 | 費用が比較的低い | 対応範囲に限界がある場合も |
| 社会福祉士 | 福祉サービスに詳しい | 財産管理の専門性はやや低い |
| NPO法人 | 組織的なサポート | 個別対応の柔軟性 |
ポイント おひとりさまで頼れる親族がいない場合は、弁護士・司法書士などの専門家やNPO法人に依頼するのが一般的です。複数の専門家に相談し、相性や費用を比較してから決めましょう。
ステップ2: 契約内容を決める
任意後見人に任せたい内容(代理権の範囲)を具体的に決めます。
代理権の対象となる主な事務: – 預貯金の管理・払い戻し – 不動産の管理・処分 – 保険契約の手続き – 介護サービスの契約 – 医療に関する契約(入院手続き等) – 税金の申告・納付 – 年金の受給手続き
報酬額や経費の精算方法も、この段階で決めておきます。
ステップ3: 公証役場で公正証書を作成する
任意後見契約は、必ず公証役場で公正証書にする必要があります(任意後見契約に関する法律第3条)。
必要書類:
| 書類 | 取得先 |
|---|---|
| 本人の戸籍謄本 | 本籍地の市区町村 |
| 本人の住民票 | 住所地の市区町村 |
| 本人の印鑑登録証明書 | 住所地の市区町村 |
| 任意後見人候補者の住民票 | 住所地の市区町村 |
| 本人の実印 | |
| 身分証明書(運転免許証等) |
公証人が契約内容を確認し、公正証書を作成します。作成には通常1〜2回の公証役場訪問が必要です。
ステップ4: 法務局へ登記される
公正証書の作成後、公証人が法務局に登記を嘱託します。本人が手続きする必要はありません。
登記が完了すると「登記事項証明書」を取得できるようになり、任意後見契約の存在を公的に証明できます。
ステップ5: 判断能力低下時に監督人選任を申立てる
本人の判断能力が低下した段階で、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てます。
申立てができる人: – 本人 – 配偶者 – 四親等内の親族 – 任意後見受任者(後見人候補者)
任意後見監督人が選任されると、任意後見人の職務が正式に開始します。
3つの契約類型
任意後見契約には「即効型」「将来型」「移行型」の3つの類型があり、本人の状況に応じて選べます。
| 類型 | 内容 | 適するケース |
|---|---|---|
| 将来型 | 契約のみ結び、判断能力低下時に発効 | 今は元気だが将来に備えたい |
| 即効型 | 契約後すぐに監督人選任を申立てる | すでに判断能力がやや低下 |
| 移行型 | まず財産管理委任契約→判断能力低下後に任意後見に移行 | 段階的に備えたい |
ポイント 50〜60代で元気なうちに備えるなら「将来型」が一般的です。一人暮らしで日常の財産管理にも不安がある場合は「移行型」がおすすめです。
任意後見制度の注意点
任意後見制度にはメリットが多い一方で、取消権がない点や監督人報酬が継続的にかかる点など、事前に理解しておくべき注意点があります。
知っておくべき5つの注意点
| # | 注意点 | 対策 |
|---|---|---|
| 1 | 取消権がない | 法定後見にある「不当な契約の取消し」ができない。被害防止は見守りで対応 |
| 2 | 監督人報酬が継続的にかかる | 月額1万〜3万円。長期化するとまとまった金額に |
| 3 | 後見人が先に亡くなるリスク | 予備の後見人を契約書に記載しておく |
| 4 | 後見人の不正リスク | 監督人がチェックするが、定期的に報告書を確認 |
| 5 | 契約後の変更が難しい | 内容変更には新たな公正証書が必要 |
任意後見制度と一緒に検討したい契約
任意後見制度だけではカバーできない部分を補うため、以下の契約を併用することで、より安心な老後を実現できます。
| 契約 | 目的 | 費用目安 |
|---|---|---|
| 財産管理委任契約 | 判断能力低下前から財産管理を委任 | 約5万〜10万円 |
| 見守り契約 | 定期的な面談・連絡で生活状況を確認 | 月額5,000〜1万円 |
| 死後事務委任契約 | 死後の葬儀・届出・解約手続きを委任 | 50万〜100万円 |
とくにおひとりさまの方は、任意後見契約+死後事務委任契約をセットで準備するケースが多いです。
死後事務委任契約の費用と注意点も参考にしてください。
よくある質問
Q. 任意後見人に資格は必要?
A. 特別な資格は不要です。家族・友人・専門家(弁護士・司法書士等)・NPO法人など、信頼できる人なら誰でも後見人になれます。ただし未成年者や破産者は後見人になれません。
Q. 任意後見契約はいつ結ぶべき?
A. 判断能力がしっかりしている50代〜60代のうちに結ぶのが理想です。認知症の診断を受けてからでは手続きできないため、「まだ早い」と思ったときこそ始めどきです。おひとりさまの老後リスクで、早めの備えの大切さを解説しています。
Q. 任意後見契約を解除できる?
A. はい、解除できます。任意後見監督人が選任される前であれば、公証人の認証を受けた書面で解除できます。監督人が選任された後は、家庭裁判所の許可が必要になります。正当な事由(後見人の不正など)がある場合に認められます。
Q. 公正証書の作成にはどのくらい時間がかかる?
A. 事前相談から公正証書の完成まで、通常2〜4週間程度です。公証役場への訪問は2回程度(事前相談+作成日)が一般的です。必要書類の準備に時間がかかる場合もあるため、余裕を持って進めましょう。
Q. 任意後見人の報酬はいくらが相場?
A. 専門家(弁護士・司法書士)に依頼した場合、月額2万〜5万円が相場です。家族が後見人になる場合は無報酬のケースも多いですが、負担の大きさを考慮して月額1万円程度を設定する場合もあります。報酬額は契約時に自由に決められます。
まとめ
任意後見制度は、「自分のことは自分で決めたい」という希望を実現するための大切な制度です。
【この記事の結論】を振り返ります。
- 任意後見制度 — 判断能力があるうちに、自分で後見人を選べる唯一の制度
- 費用の目安 — 契約時約7万〜17万円、運用中は月額3万〜8万円
- 手続きは5ステップ — 後見人選び→契約内容決定→公正証書作成→登記→監督人選任
- 法定後見との違い — 自分で後見人を選べるのは任意後見だけ
- 併用がおすすめ — 死後事務委任契約や見守り契約とセットで安心度が上がる
まずはお住まいの地域の公証役場に相談し、任意後見契約の具体的な進め方を確認してみましょう。
エンディングノートの書き方で後見人の情報を記録しておくと、万が一のときにも安心です。
※ この記事は一般的な情報提供を目的としています。 具体的な制度の利用や契約については、弁護士・司法書士などの専門家にご相談ください。
最終更新日: 2026年2月24日
