※ この記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の事情については、専門家(弁護士・税理士・行政書士など)にご相談ください。




【この記事の結論】 成年後見制度は法定後見と任意後見の2種類があり、申立て費用は約1万〜15万円、後見人報酬は月2万〜6万円が相場です。

  • 2つの制度を使い分ける — 判断能力低下後は「法定後見」、元気なうちに備えるなら「任意後見」を選びます
  • 費用は初期+月額の2本立て — 法定後見は申立て1万〜15万円+月額2万〜6万円、任意後見は契約13万〜23万円+月額4万〜8万円が目安です
  • 手続きは4ステップで完了 — 書類準備→申立て→調査・鑑定→審判・開始まで約2〜4ヶ月かかります

この記事の対象読者: 認知症に備えたい50代・60代の方、親の判断能力低下で財産管理に困っている方

読んだら今日やること: お住まいの地域包括支援センターに電話して、成年後見制度の無料相談会の日程を確認しましょう

「もし自分が認知症になったら、預金の管理や契約手続きはどうなるのだろう」

こうした不安を抱える50代・60代の方は少なくありません。認知症になると、預金の引き出しや不動産の売却、施設への入所契約など、重要な判断ができなくなる可能性があります。

そんなときに活用できるのが「成年後見制度」です。この制度を利用すれば、信頼できる後見人が本人に代わって財産管理や契約手続きを行ってくれます。

この記事では、成年後見制度の仕組みから、法定後見と任意後見の違い、手続きの流れ、費用の相場まで、わかりやすく解説します。

成年後見制度とは?制度の基本をわかりやすく解説

成年後見制度とは、認知症・知的障害・精神障害などで判断能力が不十分になった人の権利を守るための制度です。本人に代わって、後見人が財産管理や身の回りの法律行為を行います。

後見人ができること

成年後見人には、主に次の2つの役割があります。

  • 財産管理: 預貯金の管理、不動産の売却・管理、税金や保険料の支払い
  • 身上監護: 入院・施設入所の契約、介護サービスの利用契約、住居の確保

2つの制度がある

成年後見制度は、大きく2つに分かれます。

制度 概要
法定後見制度 すでに判断能力が低下した人のために、家庭裁判所が後見人を選任する
任意後見制度 判断能力があるうちに、自分で後見人を選んで契約しておく

元気なうちに終活として備えるなら「任意後見制度」、すでに認知症の症状がある場合は「法定後見制度」を利用します。終活で何から始めるべきか迷ったら、全体像をこちらで確認できます

法定後見と任意後見の違い|比較表で整理

法定後見と任意後見は、利用するタイミングや仕組みが大きく異なります。比較表で整理します。

法定後見 vs 任意後見の比較表

比較項目 法定後見 任意後見
利用時期 判断能力が低下した後 判断能力があるうちに契約
後見人の選び方 家庭裁判所が選任 本人が自由に選べる
後見人の権限 法律で規定(類型による) 契約で自由に設定
取消権 あり なし
監督者 家庭裁判所 任意後見監督人(家裁が選任)
申立てできる人 本人・配偶者・4親等内の親族等 本人・配偶者・任意後見人等
費用の目安 申立て1万〜15万円+月額報酬 契約13万〜23万円+月額報酬

法定後見制度の3つの類型

法定後見制度には、判断能力の程度に応じて3つの類型があります。

類型 対象 後見人の権限
後見 判断能力がほぼない すべての法律行為を代理
保佐 判断能力が著しく不十分 重要な法律行為に同意・取消権
補助 判断能力が不十分 一部の法律行為に同意・取消権

どちらを選ぶべきか?

以下の判断基準を参考にしてください。

任意後見を選ぶべきケース:
– 今は元気で判断能力に問題がない
– 自分で後見人を選びたい
– 任せたい内容を細かく指定したい

法定後見を選ぶべきケース:
– すでに認知症の症状が出ている
– 家族が本人の財産管理に困っている
– 悪質な契約を取り消したい(取消権が必要)

法定後見制度の手続きの流れ|申立てから開始まで

法定後見制度を利用するには、家庭裁判所への申立てが必要です。手続きの流れは以下のとおりです。

STEP1: 申立て準備(必要書類の収集)

申立てに必要な書類を集めます。主な必要書類は以下のとおりです。

  • 申立書(家庭裁判所で入手)
  • 本人の戸籍謄本
  • 本人の住民票
  • 診断書(かかりつけ医に作成を依頼)
  • 登記されていないことの証明書(東京法務局で取得)
  • 本人の財産目録と収支状況の報告書

STEP2: 家庭裁判所への申立て

本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行います。申立てができるのは、本人・配偶者・4親等内の親族・市区町村長などです。

STEP3: 調査・鑑定

家庭裁判所の調査官が本人や申立人に面接調査を行います。必要に応じて、医師による鑑定が行われることもあります。鑑定が必要な場合は、5万〜10万円程度の費用がかかります。

STEP4: 審判・後見開始

裁判所が後見人を選任し、審判が確定すると後見が始まります。後見開始の登記が行われ、後見人は財産管理と身上監護の事務を開始します。

所要期間

申立てから審判まで、一般的に約2〜4ヶ月かかります。書類の不備がなく、鑑定が不要な場合は2ヶ月程度で完了することもあります。

任意後見制度の手続きの流れ

任意後見制度は、元気なうちに契約を結んでおく制度です。

STEP1: 任意後見人を選ぶ

まず、自分の後見人になってもらう人を選びます。信頼できる親族、弁護士、司法書士、社会福祉士などが候補になります。

STEP2: 公正証書で任意後見契約を作成

任意後見契約は、必ず公正証書で作成する必要があります(法律で義務付けられています)。契約書には、後見人に任せたい事務の内容と範囲を具体的に記載します。

契約書に盛り込む主な内容は以下のとおりです。

  • 財産管理の範囲(預貯金・不動産の管理、税金の支払い等)
  • 身上監護の範囲(施設入所の契約、医療に関する手続き等)
  • 後見人の報酬
  • 契約の解除条件

STEP3: 判断能力低下後に監督人選任を申立て

本人の判断能力が低下した場合、家庭裁判所に「任意後見監督人」の選任を申し立てます。申立ては、本人・配偶者・任意後見受任者などが行えます。

STEP4: 任意後見の開始

家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時点で、任意後見契約の効力が発生します。任意後見人は、契約で定められた事務を本人に代わって行います。

成年後見制度の費用|申立て費用と月額報酬の相場

成年後見制度にかかる費用は、「初期費用(申立て費用)」と「継続費用(後見人の報酬)」に分かれます。

法定後見の申立て費用

費目 金額
申立手数料(収入印紙) 800円
後見登記手数料(収入印紙) 2,600円
郵便切手代 3,000〜5,000円
診断書作成費用 3,000〜1万円
鑑定費用(必要な場合) 5万〜10万円
住民票・戸籍謄本等 数千円
合計目安 約1万〜15万円

鑑定が不要な場合は1万円前後で済みますが、鑑定が必要な場合は15万円程度になることもあります。

後見人の月額報酬

後見人の報酬は、家庭裁判所が「報酬付与の審判」で決定します。本人の財産額や後見事務の内容によって異なります。

後見人の種類 月額報酬の目安
弁護士・司法書士 月2万〜6万円
社会福祉士 月2万〜4万円
親族後見人 月0〜3万円

後見人の報酬は、全国平均で月額約2万8,600円です。管理する財産が多い場合や、特別な事務(不動産の売却など)を行った場合は、報酬が加算されることがあります。

任意後見の費用

費目 金額
公正証書作成手数料 約3万円(公証人手数料1万1,000円+印紙代等)
専門家への契約書作成支援報酬 10万〜20万円
任意後見人の月額報酬(専門職の場合) 月3万〜5万円
任意後見監督人の月額報酬 月1万〜3万円

任意後見の場合、後見人に加えて任意後見監督人の報酬も必要になるため、法定後見よりも月額費用が高くなる傾向があります。

費用を払えない場合の助成制度

各市区町村では「成年後見制度利用支援事業」を実施しています。この事業では、以下の費用を助成してもらえる場合があります。

  • 申立て費用(収入印紙代、鑑定費用等)
  • 後見人の報酬

対象となるのは、身寄りがなく経済的に困窮している方などです。お住まいの市区町村の福祉担当課や地域包括支援センターに問い合わせてみてください。

成年後見制度と家族信託・死後事務委任契約の違い

成年後見制度以外にも、将来に備える制度があります。それぞれの違いを整理します。

3つの制度の比較

制度 主な目的 効力の時期 費用の目安
成年後見制度 判断能力低下後の財産管理・身上監護 判断能力低下後〜死亡まで 月2万〜6万円
家族信託 財産管理・承継の柔軟な設計 契約時〜信託終了まで 初期費用30万〜100万円
死後事務委任契約 死後の事務手続き(葬儀・届出等) 死後 総額100万〜300万円

家族信託との違い

家族信託は、信頼できる家族に財産の管理・処分を任せる仕組みです。成年後見制度との主な違いは以下のとおりです。

  • 家族信託は財産管理に特化(身上監護はできない)
  • 家族信託は認知症になる前に設定が必要
  • 家族信託のほうが財産の柔軟な運用が可能(不動産の売却・投資等)
  • 成年後見制度は家庭裁判所の監督があり、資産の積極的運用は難しい

死後事務委任契約との違い

成年後見制度は本人の死亡で終了するため、死後の事務手続きには対応できません。葬儀の手配や各種届出、遺品整理などは、別途「死後事務委任契約」を結んでおく必要があります。

死後事務委任契約の費用や手続きについてはこちらの記事で詳しく解説しています

制度を組み合わせた備え

おひとりさまや高齢の方が安心して老後を迎えるには、複数の制度を組み合わせることが理想的です。

  1. 任意後見契約: 判断能力低下後の財産管理と身上監護
  2. 遺言書: 財産の分配と相続
  3. 死後事務委任契約: 死後の事務手続き

この3つを組み合わせることで、判断能力の低下から死後まで、切れ目なくカバーできます。

よくある質問

Q. 成年後見制度は何歳から利用できますか?

年齢制限はありません。認知症や知的障害などで判断能力が不十分であれば、何歳でも利用できます。ただし、任意後見制度は判断能力があるうちに契約を結ぶ必要があるため、早めの準備が大切です。

Q. 親族が後見人になれますか?

はい、親族も後見人になれます。ただし、法定後見の場合は家庭裁判所が適任と判断した人を選任するため、必ずしも親族が選ばれるとは限りません。最高裁判所の統計(2024年)によると、親族以外の第三者(弁護士・司法書士・社会福祉士等)が後見人に選任されるケースが全体の約83%を占めています。

Q. 後見人を途中で変更できますか?

法定後見の場合、家庭裁判所に後見人の解任を申し立てることができます。ただし、解任が認められるのは、後見人が不正な行為をした場合や著しい不行跡があった場合など、正当な理由がある場合に限られます。任意後見の場合は、本人と後見人の合意で契約を解除し、新たに契約を結び直すことが可能です。

Q. 成年後見制度のデメリットは何ですか?

主なデメリットは3つあります。まず、一度始めると本人の判断能力が回復しない限り、原則として終了できません。次に、専門職の後見人が選任された場合、毎月の報酬が発生し続けます。また、家庭裁判所の監督下に置かれるため、財産の自由な処分(投資や贈与など)が制限されます。

まとめ

成年後見制度は、認知症などで判断能力が低下した場合に、本人の権利と財産を守るための大切な制度です。

制度 利用のタイミング 費用の目安
法定後見 判断能力低下後 申立て1万〜15万円+月額2万〜6万円
任意後見 判断能力があるうちに 契約13万〜23万円+月額4万〜8万円

元気なうちに備えるなら、任意後見制度がおすすめです。自分で信頼できる後見人を選び、任せたい内容を細かく指定できます。

まずは、お住まいの地域の地域包括支援センターや、司法書士・弁護士に相談してみてください。多くの自治体で無料の成年後見制度相談会を実施しています。


免責事項: この記事は2026年2月時点の情報をもとに作成しています。法律や制度は改正される場合がありますので、実際の手続きにあたっては専門家にご相談ください。費用相場は目安であり、地域や依頼先によって異なる場合があります。

参考情報・出典