【この記事の結論】 自筆証書遺言は全文手書き・日付・署名・押印の4要件を守れば費用ほぼ0円で作成でき、法務局の保管制度(3,900円)を使えば検認も不要です。

  • 自筆証書遺言の書き方 — 5つのSTEPで財産リストアップから封印まで完了
  • 無効になる7つのケース — パソコン作成・「吉日」表記・修正液使用などのNG例
  • 法務局の保管制度 — 手数料3,900円で紛失・改ざん防止+検認不要

この記事の対象読者: 初めて遺言書を書く方、書き方のルールを確認したい方、費用を抑えて遺言書を残したい方

読んだら今日やること: まずは財産をすべて紙に書き出して一覧表を作成しましょう

「遺言書を自分で書きたいけれど、書き方がわからない…」

そんな不安を感じている方は少なくありません。遺言書にはいくつかの決まりごとがあり、知らずに書くと無効になってしまうこともあります。

この記事では、自筆の遺言書(自筆証書遺言)の書き方を5つのSTEPでわかりやすく解説します。初めての方でも安心して取り組めるよう、見本や例文、よくある失敗パターンもあわせて紹介します。2019年の法改正で財産目録がパソコンで作成できるようになった点や、法務局の保管制度もくわしく取り上げますので、ぜひ参考にしてください。

自筆の遺言書(自筆証書遺言)とは?3つの遺言書との違い

遺言書の書き方を見ていく前に、まずは遺言書の種類を整理しておきましょう。一般的に使われる遺言書には3つの種類があります。

自筆証書遺言の特徴とメリット・デメリット

自筆証書遺言とは、遺言者(遺言を残す人)が本文の全文・日付・氏名を自分の手で書き、押印して作成する遺言書です。法務省の自筆証書遺言に関するルール説明ページにもあるとおり、民法第968条に定められています。

メリット:

  • 紙とペンがあればいつでも作成できる
  • 費用がほとんどかからない(法務局の保管制度を利用しても3,900円)
  • 内容を秘密にしておける
  • 何度でも書き直しができる

デメリット:

  • 形式の不備で無効になるおそれがある
  • 自宅で保管すると紛失や改ざんのリスクがある
  • 遺言者の死後、家庭裁判所での「検認」が必要(法務局保管の場合は不要)

公正証書遺言・秘密証書遺言との違い

種類 作成方法 費用の目安 検認 安全性
自筆証書遺言 自分で全文を手書き ほぼ0円〜3,900円 必要(法務局保管なら不要) △(紛失・改ざんリスクあり)
公正証書遺言 公証人が作成 約5万〜10万円以上 不要 ◎(公証役場で保管)
秘密証書遺言 内容を秘密にして存在のみ証明 1万1,000円 必要 △(利用は少ない)

費用を抑えたい方や、まずは自分で遺言書を作成してみたい方には、自筆証書遺言がおすすめです。

自筆の遺言書が無効になる7つのケース

せっかく遺言書を書いても、形式に不備があると無効になってしまいます。書き始める前に、よくある失敗パターンを確認しておきましょう。

本文をパソコンや代筆で作成した

自筆証書遺言の本文は、必ず遺言者本人が手書きしなければなりません。パソコンで作成したものや、家族に代筆してもらったものは無効です。

ポイント 2019年の法改正で「財産目録」はパソコンで作成できるようになりましたが、本文は必ず手書きが必要です。くわしくは後ほど解説します。

日付の書き方が不正確(「吉日」はNG)

遺言書には作成した日付を正確に記載する必要があります。「令和8年2月18日」のように年月日が特定できる形式で書きましょう。

「令和8年2月吉日」のように日にちが特定できない書き方は無効になります。日付もスタンプ印ではなく、必ず自筆で書いてください。

署名・押印が漏れている

遺言書には、遺言者の署名と押印が必要です。署名は戸籍上の氏名を正確に書きましょう。押印は認印でも問題ありませんが、実印のほうがより確実です。シャチハタなどのスタンプ印は避けてください。

鉛筆や消えるボールペンで書いた

遺言書は長期間保管されるため、消えにくい筆記具を使うことが大切です。ボールペンや万年筆を使いましょう。

鉛筆やシャープペンシル、消えるタイプのボールペン(フリクション等)は、改ざんのおそれがあるため使わないでください。

財産の記載があいまい

「財産を半分ずつ分ける」のようなあいまいな書き方は、相続人の間でトラブルの原因になります。不動産は登記簿どおりの表記で、預貯金は銀行名・支店名・口座番号まで具体的に記載しましょう。なお、相続が発生した際の具体的な手続きについては相続手続きを自分でやる方法で詳しく解説しています。

修正液・修正テープで訂正した

遺言書の訂正には、法律で決められた方法があります。修正液や修正テープを使って訂正すると、遺言書全体が無効になるおそれがあります。

正しい訂正方法は、二重線で消して訂正印を押し、欄外に「○字削除△字加入」と記載して署名します。ただし、書き間違えた場合は最初から書き直すほうが確実です。

夫婦で1通の遺言書を作成した(共同遺言)

民法では、2人以上が同じ遺言書に連名で記載する「共同遺言」が禁止されています。夫婦であっても、1人1通ずつ別々に作成してください。

自筆の遺言書の書き方|5つのSTEP

ここからは、自筆証書遺言の具体的な書き方を5つのSTEPで解説します。

STEP1. 財産をすべてリストアップする

まずは、ご自身が持っている財産をすべて書き出しましょう。漏れがあると、遺言書に記載されなかった財産についてトラブルが起きることがあります。

リストアップする財産の例:

種類 具体例
不動産 自宅の土地・建物、投資用マンションなど
預貯金 銀行名・支店名・口座の種類・口座番号
有価証券 株式、投資信託、国債など
生命保険 保険会社名・証券番号
自動車 車種・登録番号
その他 貴金属、美術品、ゴルフ会員権など
負債 住宅ローン、借入金など

ポイント 2019年の法改正により、この財産リスト(財産目録)はパソコンで作成できるようになりました。手書きが大変な方は、パソコンで一覧表にまとめると便利です。ただし、各ページに署名と押印を忘れないでください。

STEP2. 誰に何を相続させるか決める

財産のリストができたら、誰にどの財産を相続させるかを決めます。

決める際のポイントは以下のとおりです。

  • 法定相続人を確認する: 配偶者、子ども、親、兄弟姉妹など
  • 遺留分に配慮する: 配偶者や子どもには、法律で保障された最低限の取り分(遺留分)があります。相続財産の評価については相続税はいくらからかかるのかもあわせてご確認ください
  • 具体的に指定する: 「長男に自宅」「妻に預貯金」のように、財産ごとに相続人を決めましょう

STEP3. 下書きを作成する

いきなり清書するのではなく、まずは下書きから始めましょう。下書きの段階ではパソコンやメモ用紙を使ってもかまいません。

遺言書に記載すべき項目:

  1. 表題: 「遺言書」
  2. 前文: 「遺言者○○○○は、以下のとおり遺言する。」
  3. 財産の分配: 誰に何を相続させるかを具体的に
  4. 遺言執行者の指定(任意): 遺言の内容を実行する人の指定
  5. 付言事項(任意): 家族へのメッセージ
  6. 日付: 年月日を正確に
  7. 署名・押印: 戸籍上の氏名 + 印鑑

STEP4. 清書する(用紙・筆記具・書き方のルール)

下書きの内容に問題がなければ、清書に移りましょう。

清書のルール:

項目 ルール
用紙 特に指定なし。丈夫で長期保存に耐える紙がおすすめ。法務局保管制度を利用する場合はA4サイズ
筆記具 ボールペンまたは万年筆(消えないもの)
本文 すべて自筆(手書き)
日付 年月日を自筆で記載(「吉日」はNG)
署名 戸籍上の氏名を自筆で
押印 認印でもOK。実印が望ましい。シャチハタは避ける
書き方 縦書き・横書きどちらでもOK

注意 書き間違えた場合は、最初から書き直すのがもっとも安全です。訂正する場合は、法律で定められた方法(二重線+訂正印+欄外記載+署名)を守ってください。

STEP5. 封筒に入れて封印する

清書した遺言書は封筒に入れて封印しましょう。封印は法律上の義務ではありませんが、改ざんを防ぐために行うことをおすすめします。

封筒の書き方:

  • 表面に「遺言書」と記載する
  • 裏面に「開封しないで家庭裁判所に提出すること」と記載する
  • 封をしてから押印する(遺言書に使った印鑑と同じものが望ましい)

【2019年法改正】財産目録はパソコンで作成できる

2019年(平成31年)1月13日の民法改正により、自筆証書遺言の作成ルールが一部緩和されました。この改正は、自筆の遺言書を書く際にとても大きなポイントです。

法改正の内容と注意点

改正前は、財産目録も含めた全文を手書きする必要がありました。しかし、財産が多い方にとっては、すべてを手書きするのは大きな負担でした。

改正後は、財産目録に限って以下の方法で作成できるようになりました。

  • パソコンで一覧表を作成してプリントアウトする
  • 不動産の登記事項証明書のコピーを添付する
  • 預貯金通帳のコピーを添付する
  • 第三者による代筆

重要な注意点:

  • 遺言書の本文は従来どおり、必ず手書きが必要です
  • 財産目録の各ページに、遺言者の署名と押印が必要です(裏面にも記載がある場合は裏面にも)
  • 2019年1月12日以前に作成された遺言書には適用されません

パソコンで財産目録を作るときの具体的な方法

パソコンで財産目録を作成する場合の書き方の例を紹介します。

不動産の場合:

【財産目録】

1. 土地
   所在: ○○県○○市○○町○丁目
   地番: ○○番○○
   地目: 宅地
   地積: 120.50平方メートル

2. 建物
   所在: ○○県○○市○○町○丁目○○番地○○
   家屋番号: ○○番○○
   種類: 居宅
   構造: 木造瓦葺2階建
   床面積: 1階 60.00平方メートル
         2階 40.00平方メートル

預貯金の場合:

3. 預貯金
   ○○銀行 ○○支店 普通預金 口座番号: 1234567
   △△銀行 △△支店 定期預金 口座番号: 7654321

財産目録を印刷したら、各ページの余白に署名と押印をしてください。遺言書本文と合わせてとじて、各ページの境目に割り印を押すとより安全です。

遺言書の見本・例文(ケース別)

実際の遺言書の書き方がイメージできるよう、ケース別の例文を紹介します。

妻に全財産を相続させる場合

            遺言書

  遺言者○○○○は、以下のとおり遺言する。

  第1条 遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、
  妻○○○○(昭和○○年○○月○○日生)に
  相続させる。

  令和○年○月○日

                    住所 ○○県○○市○○町○丁目○番○号
                    遺言者 ○○○○  印

子どもに分けて相続させる場合

            遺言書

  遺言者○○○○は、以下のとおり遺言する。

  第1条 遺言者は、別紙財産目録1記載の不動産を、
  長男○○○○(昭和○○年○○月○○日生)に
  相続させる。

  第2条 遺言者は、別紙財産目録2記載の預貯金を、
  二男○○○○(昭和○○年○○月○○日生)に
  相続させる。

  第3条 遺言者は、前各条に記載した財産以外の
  一切の財産を、妻○○○○(昭和○○年○○月
  ○○日生)に相続させる。

  令和○年○月○日

                    住所 ○○県○○市○○町○丁目○番○号
                    遺言者 ○○○○  印

付言事項(メッセージ)を添える場合

付言事項とは、遺言書に法的な効力はないものの、家族へのメッセージや遺言の趣旨を記載できる部分です。

  付言事項

  長い間、家族を支えてくれた妻○○には心から
  感謝しています。子どもたちも、これからも
  互いに助け合って暮らしてください。
  この遺言書が家族の円満な関係に
  役立つことを願っています。

付言事項を添えることで、遺言の意図が家族に伝わり、相続トラブルの予防にもつながります。家族へ伝えたいことをより幅広く残したい場合は、エンディングノートの書き方も参考にしてみてください。

法務局の遺言書保管制度を活用しよう

自筆証書遺言の弱点である「紛失」「改ざん」のリスクを解消できるのが、2020年7月に始まった「自筆証書遺言書保管制度」です。

保管制度のメリット(検認不要・紛失防止)

法務局に遺言書を預けると、次のようなメリットがあります。

  • 紛失や改ざんの心配がない: 法務局で安全に保管される
  • 家庭裁判所での検認が不要になる: 相続開始後の手続きがスムーズ
  • 形式のチェックを受けられる: 保管申請時に、自筆・日付・署名・押印の形式を確認してもらえる
  • 相続人への通知制度がある: 遺言者の死後、法務局から相続人へ遺言書の存在を通知

注意 法務局での形式チェックは、外形的な要件(自筆か、日付があるか等)のみです。遺言の内容が法的に問題ないかどうかの確認はしてもらえません。内容について不安がある場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談しましょう。

手数料と申請の流れ

手続き 手数料
遺言書の保管申請 3,900円(収入印紙で納付)
遺言書の閲覧(原本) 1,700円/回
遺言書の閲覧(モニター) 1,400円/回
遺言書保管事実証明書の交付 1,800円
申請の撤回・変更届出 無料
年間の保管料 無料

申請の流れ:

  1. 遺言書を作成する(A4サイズの用紙を使用、片面のみ記載など所定の様式を確認)
  2. 最寄りの遺言書保管所(法務局)に予約を取る
  3. 本人が法務局に出向いて申請する(代理人は不可)
  4. 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード等)を持参する
  5. 手数料3,900円分の収入印紙を納付する
  6. 保管証を受け取る

一度預けてしまえば、追加の保管料はかかりません。公正証書遺言(公証人手数料だけでも約5万〜10万円以上)と比べて、非常に低コストで安心の保管ができます。

自筆の遺言書に関するよくある質問

Q. 遺言書を書くのに最低限必要なものは?

A. 必要なものは以下の4つです。

  • ボールペンまたは万年筆(消えないもの)
  • 用紙(特に指定なし。法務局保管制度を使う場合はA4サイズ)
  • 印鑑(認印でもOK。実印が望ましい)
  • 封筒(封印用)

Q. 遺言書は何歳から書けるの?

A. 民法では、15歳以上であれば遺言書を作成できると定められています(民法第961条)。年齢の上限はありませんが、認知症などで判断能力が不十分になると無効になるおそれがありますので、元気なうちに作成しておくことをおすすめします。

Q. 遺言書を書き直したいときはどうすればいい?

A. 遺言書は何度でも書き直すことができます。新しい遺言書を作成し、日付を記載すれば、古い遺言書よりも新しい遺言書の内容が優先されます。古い遺言書は破棄しておくとトラブルを防げます。法務局に保管している場合は、撤回の申請を行い、新しい遺言書を改めて保管しましょう。

Q. 遺留分を侵害する遺言書は無効になる?

A. 遺留分を侵害する遺言書は、それだけで無効になるわけではありません。ただし、相続人が「遺留分侵害額請求」を行うことで、最低限の取り分を主張できます。家族間のトラブルを避けるためにも、遺留分に配慮した内容にしておくことをおすすめします。

Q. 遺言書を見つけたらどうすればいい?

A. 自宅等で遺言書を見つけた場合は、開封せずに家庭裁判所で「検認」の手続きを行う必要があります。勝手に開封すると、5万円以下の過料が科されることがあります。ただし、法務局の保管制度を利用している遺言書については、検認は不要です。

まとめ

自筆の遺言書(自筆証書遺言)の書き方のポイントを振り返りましょう。

  • 自筆証書遺言は費用をかけずに作成できる遺言書で、紙とペンがあれば始められる
  • 本文は全て手書き、日付・署名・押印が必須。2019年の法改正で財産目録はパソコンで作成可能
  • 無効にならないために、日付の書き方や筆記具の選び方、訂正方法に注意する
  • 保管には法務局の保管制度(手数料3,900円)を活用すれば、紛失・改ざん防止かつ検認不要
  • 内容に不安がある場合は、弁護士・司法書士・行政書士などの専門家に相談する

遺言書とあわせて、相続に関する準備も進めておくと安心です。遺産分割協議書の書き方や、生前贈与を非課税で行うやり方もぜひご覧ください。

遺言書を書くことは、大切な家族への思いやりです。「まだ早い」と思わず、元気なうちに準備を始めてみてはいかがでしょうか。


※ この記事は一般的な情報提供を目的としています。 個別の事情については、専門家(弁護士・司法書士・行政書士など)にご相談ください。

最終更新日: 2026年2月18日

参考情報・出典